経営が厳しい状況に直面している企業にとって、事業を継続しながら債務を整理することは、企業再生のための重要な課題です。会社を存続させ、従業員の雇用を守り、取引先との関係を維持しつつ、借金問題を解決するためには、適切な債務整理の方法を選択する必要があります。
以下では、事業継続を目指す会社が活用できる代表的な債務整理の手法を解説します。
このページの目次
1. 私的整理
私的整理とは、裁判所を介さずに債権者と交渉し、借金の減免や返済条件の見直しを行う手続きです。
比較的柔軟で、迅速に進められる点が特徴です。
特徴と活用法
- 債権者との合意形成
債権者との協議を通じて、返済期間の延長、利息の減免、元金の一部カットなどを合意することができます。 - 秘密裏に進行
手続きが公にされないため、一般の方の企業イメージの悪化を避けることができます。もっとも、信用情報機関の情報に計上され、信用情報は悪化することがあります。 - 柔軟な対応
裁判所の関与がないため、個別の債権者との柔軟な交渉が可能です。
メリット
- 手続きが迅速で、コストが比較的低い
- 企業の信用をある程度保てる
- 取引先や顧客に悪影響を及ぼすリスクを減らせる
デメリット
- 債権者の同意が必要で、同意を得られなければ手続きが成立しない
- 大口の債権者が同意しない場合、再建が難しくなる
- 債務の大幅な減額は期待できない
私的整理が適切な事例
- 資金繰りが一時的に悪化しているが、それをしのげば事業の収益性が見込める場合
- 債務整理を表立ってしたくない場合
- 債権者の協力が得られる可能性が高い場合
2. 民事再生
民事再生は、裁判所を通じて借金を整理しながら事業を続ける再建型の法的手続きです。
企業は、再建計画を策定し、裁判所および債権者の承認を得て、債務の減免や返済スケジュールの調整を行います。
特徴と活用法
- 再建計画の策定
企業が自ら事業継続のための計画を立案し、裁判所の認可を受けます。これには、収益改善策やコスト削減案などが含まれます。 - 債務の減額
裁判所の監督下で、元金を大幅に減額してもらうことが可能です。 - 事業活動の維持
裁判所の関与により債権者からの強制執行が停止され、事業を続けながら再建に取り組むことができます。
メリット
- 事業を継続しながら大幅な借金の圧縮が可能
- 裁判所の監督下で進められるため、公正で透明な手続きが保障される
- 取引先や従業員の信頼をある程度維持できる
デメリット
- 手続きに時間とコストがかかる
- 債権者が同意しなければ再生計画は認可されない
民事再生が適切な事例
- 事業収益は問題ない場合
- 会社の民事再生では多額(数百万円)の予納金を納付できる場合
- 経営を継続していきたい場合
3. 破産・再生と資産売却や事業譲渡を組み合わせる方法
事業再生に際しては、必要に応じて会社の一部資産を売却したり、収益性の低い事業を廃業することで、資金を確保し、債務整理を進める方法も考えられます。この方法は、事業の効率化や再構築を目的として行われます。
特徴と活用法
- 資産売却
余剰資産や収益が見込めない不動産などを売却し、借金の返済に充てます。 - 事業譲渡
事業を継続するものと廃止するものに分け、一部の事業の譲渡を検討します。
メリット
- 破産との組み合わせにより、大幅な債務減額が期待できる
- 選択した事業は継続できる可能性がある
- 事業のスリム化で経営の健全化が図れる
デメリット
- 債権者への詐害行為になって否認されないよう配慮する必要がある
破産・再生と資産売却、事業譲渡の組み合わせが適切な事例
- 債務の返済がなければ継続できる事業がある場合
- 資産売却や事業譲渡をしても、債権者への不利益とならない場合
- 事業の選択と集中をしたい場合
- 別会社や個人事業として事業を継続したい場合
まとめ:最適な方法を選ぶためには
事業を継続しながら債務整理を行う場合、企業の状況や債務の規模、事業の継続性等を十分に分析することが必要です。
各方法にはメリットとデメリットがあるため、専門家と相談し、最も適した手続き方法を選択する必要があります。破産や再生に精通した弁護士をみつけることが、事業継続への第一歩です。
当事務所のサポート
当事務所は、破産・再生に特化した法律事務所です。
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