企業が経営破綻し、もはや事業継続が困難である場合、「法人破産手続き」を選択することが最終的な債務整理手段となります。
法人破産は、企業が全ての事業を停止し、所有する資産を債権者に公平に分配するための清算型の法的手続きです。手続きが完了すると、会社は法的に消滅し、債務の返済義務が免除されます。
法人破産手続きの全体の流れについて、詳しく説明します。
このページの目次
1. 経営破綻の兆候の把握と準備
まず、企業が経営破綻に陥ったと判断された場合、速やかに破産手続きの準備を開始することが重要です。
事業の継続が難しい状況に陥った場合、法人破産手続きを進める前に、財務状況をしっかりと把握し、必要な書類を整える必要があります。
準備段階で行うこと
- 財務書類の整理
貸借対照表、損益計算書、債権者一覧表、入金予定表など、会社の財務状況を正確に示す書類を用意します。売却できる不動産はないか、事業で利用していない資産はないか確認します。
破産前は財産の処分に一定の規制がありますので、破産手続きになると確定する前に、弁護士に相談して、破産前に財産を処分するか決定してください。 - 弁護士への相談
破産手続きには専門知識が必要ですので、決算書類などをもって、弁護士に相談し、適切なアドバイスを受けます。

2. 破産申立ての準備
法人破産を申し立てるためには、破産申立書を作成し、裁判所に提出します。弁護士に依頼している場合には、申立書は弁護士が作成しますので、その元になる資料を弁護士に提出します。
主な準備書類
- 税務申告書、財務諸表(貸借対照表、損益計算書など)
- 通帳類
- 債権者がわかる書類
- 資産がわかる書類(不動産登記情報、車検証、保険証券、売掛金一覧など)を記載します
- 従業員の情報が分かる書類(従業員台帳など)
- 就業規則
- 総勘定元帳
申立てのタイミング
経営者が破産状態(債務超過や支払い不能)になりそうであることを認識した時点で、速やかに弁護士に相談しましょう。法人破産に精通している弁護士であれば、破産の申立前に財産処分などをした方がいいか、即時に破産の申し立てをした方がいいか、判断をしてくれるはずです。
弁護士と協働して進めて行くと、後に否認されるリスクが減少します。

3. 裁判所への破産申立て
必要書類を弁護士に提出して申立書が完成したら、管轄の地方裁判所に破産申立てを行います。申立てが受理されると、裁判所は、申立書を精査し、破産手続きを開始するかどうかを判断します。

4. 破産手続き開始決定
裁判所が破産手続きの開始を決定すると、会社の全ての資産は「破産財団」に組み入れられます。この破産財団は、破産管財人によって管理され、債権者に公平に分配される財産となります。
破産管財人の役割
破産管財人は、裁判所から任命され、次のような業務を行います。
- 会社の資産を売却し、現金化する
- 債権者からの債権を調査し、債務の分配計画を立てる
- 経営者や取締役の資産管理状況を調査し、不当な資産移動がないかを確認
債権者集会の開催
債権者集会が開かれ、債権者に対して破産財団の状況や分配計画が報告されます。債権者は、管財人の報告に基づいて意見を述べることができます。配当する資産がない場合には、破産手続きが廃止により終了します。

5. 債務の精算と資産の分配
破産管財人が会社の全ての資産を売却し、現金化した後、債権者への配当が行われます。配当は、法律に基づいて公平に分配されますが、資産が少ない場合は、分配されないこともあります。
優先順位のある債務
破産手続きでは、債務の種類によって返済の優先順位が決められています。例えば、税金や社会保険料の未払いは、他の一般債権よりも優先して支払われます。

6. 法人の解散と破産手続きの終了
資産の分配が完了し、すべての手続きが終わると、裁判所が破産手続きの終結を宣言され、会社の法人格は消滅します。これにより、会社は完全に清算され、法人としての存在がなくなります。
小規模な法人破産の場合、破産申立から4か月~7カ月程度で終了します。
破産手続き後の影響
- 経営者は、会社の負債から解放されますが、会社破産による経営者の信用低下がしばらく続く可能性があります。
- 経営者が個人的に保証人となっている場合は、同時に経営者の個人破産手続きを検討する必要があります。
まとめ
法人破産は、会社が事業を継続できなくなった場合に選択する、債務が全てなくなる効果の大きい清算手続きです。手続きの全体が公平性をもって進められるため、破産申立前は色々な制約があります。
それに違反すると、破産が成立しなかったり否認されたりします。法人破産に精通した弁護士に相談しながら、何をしていいのか、何をしてはいけないのかを理解しておく必要があります。
当事務所のサポート
当事務所は、法人破産の申立件数が千葉県有数で、法人破産に精通した法律事務所です。また、法人破産の破産管財人も多く担当しており、どのように進めることが適切かを熟知しています。
法人破産の申立前は、禁止事項などがありその理解が重要です。また、債務や事業の見通しも合わせて説明を受けて理解しておく必要があります。法人破産に精通した弁護士に、ぜひご相談ください。