経営者個人の資産を守るための法人破産手続き

法人破産は、会社が抱えるすべての債務を清算し、法人格を解消するための手続きです。この手続きは基本的に会社の債務を処理するものであり、経営者個人の資産は法人の債務から分離されています。

しかし、経営者が個人で負う可能性のある債務やリスクもあるため、破産手続きを計画的に進めることで、経営者個人の資産を守ることができます。以下に、法人破産手続きの概要と、経営者個人の資産を保護するための具体的な対応策を解説します。

1. 法人破産の基本的な仕組み

法人破産は、会社が資金繰りの悪化などで支払い不能に陥った場合に、会社の資産を清算して債権者に配分する手続きです。

この手続きでは、会社の資産は「破産財団」として管理され、債権者への公平な分配が行われます。

1-1. 法人と経営者の責任の分離

法人格の独立性

株式会社などの法人は、経営者とは別の独立した存在です。通常、法人の債務は会社の資産でのみ返済され、経営者個人が直接責任を負うことはありません。

例外:連帯保証人のケース

中小企業の場合、経営者が個人で会社の借入金に対して連帯保証をしているケースがあります。連帯保証がある場合、会社が破産しても経営者個人に返済義務が残ります。

2. 経営者個人の資産を守るための具体的な対応策

法人破産の際に、経営者個人の資産を守るためには、以下のような対応が考えられます。

2-1. 個人保証の影響を最小限に抑える

保証の解除交渉 

借入時点で、できるだけ個人保証を設定しない借入先、制度を探します。

また、個人保証がついていても、会社が順調な時に金融機関と交渉することによって、保証を見直してもらうことが可能なケースもあります。収支や財産状態が良好な状態でしておく必要があります。

任意整理の検討

連帯保証の返済が困難な場合、個人の債務整理として任意整理を行い、債権者と返済条件を緩和する交渉を行います。これにより、将来利息や遅延損害金を減らすことができますが、元金の減額は期待できません。

2-2. 法人資産と個人資産の明確な分離

適正な財務管理

法人と個人の財産を厳密に分けて管理することが、経営者個人の資産を守る基本です。

たとえば、支払不能となった後、個人の資産を法人に入れても回収することはほとんど不可能です。逆に、法人の資産も、経営者個人の財産へ混入しないようにしましょう。不正な資産移動とみなされるリスクがあります。

適切な資産移動の回避

破産手続き前に、法人資産を個人資産に移動する行為は法律で厳しく制限されています。破産法では、不当な資産移動があった場合、破産管財人がその取引を無効にすることがあります。

したがって、破産前の資産移動は、弁護士に相談しながら慎重にしましょう。

2-3. 個人再生を視野に入れる

個人保証が残る場合

会社破産の際に、経営者が個人保証債務を抱えている場合、並行して個人再生を検討することも選択肢の一つです。個人再生によって、必要な事業用財産などを残せます。場合によっては、会社財産を適正な時価で購入することもできます。

事業用財産等を残す必要がない場合は、個人破産手続きによって、個人の借金を免除してもらったほうが得策です。

個人再生のメリット 

個人再生は、原則、必要な財産をすべて残すことができます。会社は破産で消滅させるが、個人で事業を継続したい場合などは、個人再生を利用することによって、事業を継続できる場合があります。

個人再生によって、大幅に借金を減額することが可能です。

ただし、個人再生後の一定期間は信用情報に登録されるため、金融取引が制限されます。

3. 法人破産における代表者の注意点

法人破産では、適切に行動しなければ代表者個人の責任が重くなる可能性もあります。次の点に注意しましょう。

3-1. 資産隠しや債権者を害する行為の禁止

資産隠匿の禁止

会社破産手続き前に資産を隠す行為や、特定の債権者にのみ返済を行う行為は法律で禁止されています。

こうした行為が発覚すると、代表者個人に刑事責任が問われたり、破産手続きが不利に進んだりする場合があります。

破産管財人への協力

破産手続きが進む中で、破産管財人に対する協力が義務付けられています。すべての財産状況を正直に開示し、必要な情報を提供することで、スムーズな手続き進行が可能です。

3-2. 労働債権の対応

未払い賃金の処理

破産手続きでは、従業員の未払い給与が優先した債権として扱われます。

また、一定の範囲で未払賃金立替払制度が利用できますので、従業員に適切に説明を行いましょう。経営者として会社の業務に尽くしてくれた従業員の権利を尊重し、場合によっては再就職も支援しましょう。

4. 法人破産後の再起の準備

破産後、経営者は新たな事業を立ち上げたり、再スタートを切ることが可能です。破産手続中から再起に向けた準備をしておくことが大切です。

4-1. 信用回復のための努力

地道な信用回復 

破産後は、取引先や金融機関からの信用を回復するのに時間がかかります。再起に向けて、小さな成功を積み重ね、信頼を取り戻す努力を続けることが必要です。

再チャレンジ支援制度の活用

各自治体や公的機関が提供する再チャレンジ支援制度を活用することで、事業再建に向けたサポートを受けることができます。再起を目指す経営者向けの助成金や融資制度も検討しましょう。

4-2. 事業計画の見直しと新規事業の検討

新規事業のアイデアを育てる

破産後の再起を目指して、新たな市場や事業の可能性を探ります。市場調査や顧客のニーズに基づいたビジネスプランを練り、実現可能性を検討します。

もっとも、慣れた事業を継続したいという方は、違う地域で同業種で再起を図る方もいらっしゃいます。

パートナーシップの構築

信頼できるパートナーとの連携を図り、共同事業や業務提携を通じて新たなビジネスの展開を模索します。そのパートナーの信用情報がクリーンであれば、金融上取引が行いやすいです。

まとめ

法人破産は、経営者にとって大きな負担とストレスを伴いますが、計画的に手続きを進めることで、経営者個人の資産を守ることができます。個人保証の整理、適正な資産管理、専門家のアドバイスを受けることが、リスク軽減につながります。

また、破産後の再起に向けた準備を整え、次のステップに進むことが重要です。

当事務所のサポート

当事務所では、法人破産に関する申立代理だけでなく、経営者(代表者)の個人事業や生活面も考慮して、手続きを進めていきます。

もっとも、法人資産の個人への財産移動は、申立前は特に厳しくチェックされますので、会社破産、再生に精通した弁護士に、ぜひご相談しながら進めてください。

経験豊富な弁護士が、最善の解決策を一緒に考えます。

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