自己破産は、借金の返済が困難な状況にある方にとって、経済的な再スタートを切るための有効な手続きです。しかし、自己破産にはいくつかのリスクと注意すべき点があり、生活に影響を与える要素もあります。
以下では、自己破産のリスク、生活への影響、注意点について解説します。
このページの目次
1. 自己破産の主なリスクとデメリット
1-1. 信用情報への影響
ブラックリスト入り
自己破産を行うと、信用情報機関に約5〜10年間、事故情報として登録されます。その間は、新しい借入れ、ローン、クレジットカードの利用がほぼ不可能になります。
住宅ローン・自動車ローンの制限
5~10年程度大きなローンを組むことも制限されるため、生活の中で計画していた大きな買い物が難しくなります。
1-2. 財産の処分
資産の換価
基本的に、持ち家や高価な車などの資産はとられてしまいます。もっとも、通常は、返済できなくなる前にそのような物は売却して返済に回している方が多いと思います。
返済ができなくなって破産をする方のほとんどは、何も取られないで破産手続きが終わります。預金、保険、退職金(8分の1計算、)自動車等の時価の合計が99万円以下であれば、財産は原則残せます。自宅の中の物が持っていかれるということは、原則ありません。
保険の解約
保険は解約返戻金が時価とされます。保険を含めた各財産の合計額が99万円以下であれば、そのまま残せます。
1-3. 職業制限(手続き中のみ)
就業制限
自己破産手続き中に限り、一部の職業に就くことが制限されます。
たとえば、弁護士、税理士、警備員、保険代理店などの職業に就くことはできません。免責決定が下りると制限は解除されることがほとんどですが、変更されることがありますので、ネットなどで直近の制限を確認しましょう。
1-4. 賃貸契約への影響
賃貸契約が難しくなる
新しく賃貸契約を結ぶ際に、保証会社がつくパターンで信用情報機関に照会をかける場合、保証人を求められたり、契約が難しくなったりすることがあります。
そのような場合、不動産会社に相談して、契約審査が緩いところなどを紹介してもらいましょう。既に住んでいる賃貸住宅に関しては、家賃の支払いを続ける限り、通常は退去を求められることはありません。
1-5. 官報への掲載
公的記録として掲載
自己破産の情報は「官報」という国が発行する広報誌に掲載されます。官報は一般の人が簡単に見るものではないため、大きく生活に影響することは少ないです。
2. 自己破産の生活への具体的な影響
2-1. 日常生活への影響
クレジットカードの利用停止
自己破産をすると、現在持っているクレジットカードは利用できなくなります。現金、コンビニ払い、引落、デビットカード等を利用する生活に切り替える必要があります。
ローン契約の制限
自己破産後は、5年~10年間住宅ローンや自動車ローンを組むことができなくなります。
携帯電話の分割購入
携帯電話の機種代金を分割で支払う契約ができなくなる場合があります。新しい機種を購入する場合は、一括払いが必要になることがあります。
2-2. 家族への影響
家族が保証人の場合
自己破産によって、保証人になっている家族に一括請求がいきます。保証人にどのように伝えるか、請求された場合どうするか等を検討する必要があります。
精神的負担
破産をすると家族に伝えると、家族関係に影響する場合があります。破産はイメージしているものよりも多くの方が利用している制度であり、再スタートのための手続として理解してもらいましょう。
自宅内の物がとられることは基本的にない、自分と家族の財産は別であることなどを説明して、安心してもらいましょう。破産では家計の収支のわかる書類が必要になりますので、家計を担当している家族に協力をお願いしましょう。
3. 自己破産に関する注意点
3-1. 免責不許可事由に注意
免責が認められない場合
ギャンブル、投資、浪費が原因の借金、詐欺的行為が伴う借金などは、免責不許可事由に該当します。ただし、ほとんどの場合、裁量免責が認められます。
正直に状況を説明する
手続き中に財産や借金の状況を正直に説明しないと、免責が認められない可能性があります。破産管財人からの指示事項に、真摯に協力することが必要です。
3-2. 財産隠しの禁止
資産隠匿は刑事罰
自己破産前に財産を隠したり、不正に処分したりすると、破産犯罪として罰せられる可能性があります。すべての財産を正確に申告することが義務付けられています。
4. 自己破産のメリット
一方で、自己破産には以下のようなメリットもあります。
借金の返済義務がなくなる
免責が認められることで、借金を返済する義務がなくなり、経済的に再スタートを切ることができます。ただし、個人の税金、養育費などは非免責債権です。
取り立ての停止
弁護士への依頼後は、債権者からの取り立てや督促がストップします。これにより、精神的なプレッシャーから解放されます。
一定の財産は保護される
自宅内の家具・家電、預金、保険、自動車などは時価の合計が99万円であれば、そのまま残すことができます。99万円を超えている場合でも、買取などで残せないか弁護士と協議しながら進めていきます。
5. 自己破産を避けたい場合の代替案
もし自己破産が避けたい場合は、他の債務整理方法も検討できます。
任意整理
将来利息や遅延損害金を減額し、無理のない返済計画を立てます。
個人再生
裁判所を通じて借金の元金を概ね5分の1に減額し、3年程度で返済します。住宅ローンのある自宅を残すことが可能です。
6. 自己破産を選ぶ際に考慮すべきこと
必要書類の準備
自己破産申立においては、たくさんの書類が必要です。その中には、水道光熱費の領収書(明細書)、保険の契約返戻金が分かる書類、通帳(銀行取引明細書)、源泉徴収票など、家計を担当していないと取得が難しい書類などもあります。
破産申立中は、定期的に必要になりますので、必要書類をしっかり提出できるように家族に協力を求め、準備をしておく必要があります。
専門家のサポート
自己破産を検討して場合には、弁護士に相談し、手続きを適切に選択して、申立準備を進めることが必要です。破産に精通している弁護士であれば、適切な選択肢を提供してくれるはずです。
まとめ
自己破産は、借金が0になる非常に強力な手段です。もっとも、必要書類が多かったり、6か月~1年程度は仕事をしながらの並行作業になったり、一定の負担があります。借金を0にするためと考え、頑張ってください。
借金が多額になっている場合には、毎月利息を返済しているだけで、元金が減らすことは容易ではありません。一度借金を0にして、収入で生活する日常に戻ってみてください。精神的負担が軽減されるはずです。
当事務所のサポート
当事務所は、破産、再生に特化した法律事務所です。自己破産は、世間で言われているような大きなデメリットはない一方で、借金がなくなるという強力な制度です。
当事務所は、できるだけご希望の財産を残せるように、手続きを進めていきます。また、免責不許可事由があったとしても、裁量免責が認められるように手続きを進めていきます。ですので、借金の理由を率直に伝えてもらって大丈夫です。
借金が減らない、もう限界となったら、お気軽に自己破産に精通している当事務所にご相談ください。適切な選択肢をご提案できると思います。