親や子のいない兄弟に多額の借金がある場合、生前や死亡後にどのような対策をとった方がいいでしょうか。
親や子のいない兄弟の借金については、採用する方法によって、残せる金額が大きく変わってくることもあります。非常にテクニカルで債務問題と相続問題の両方の知識、経験を要する分野といえるでしょう。
このページの目次
1. まずは、借金の確認
1-2. 生前
親や兄弟であっても、勝手に債務調査をすることはできません。
懸念がある場合には、本人に聞いたり、督促状が届いていたりするか、親や兄弟の債務を大まかでいいでの確認をしておきましょう。
1-2. 死亡後(相続後)
信用情報照会
死亡後は、相続を証する書類を提出して、親や兄弟の債務について、信用情報機関が保有している信用情報の開示を受けることで調査が可能です。
信用情報機関には、CIC・JICC・KSCという3つの機関があり、いずれも郵送・インターネットで取得が可能です。ネット検索などで取得方法が調べられます。
2. 想定事例
借金と相続が関わる問題は、バリエーションがあります。
2-1. 債務と相続に関する前提知識
被相続人に借金(債務)があった場合
相続では、亡くなった人の借金を、原則として相続人が引き継ぎます。
複数の相続人がいる場合には、法定相続分にしたがって債務が分割されて承継されます。
(例)被相続人に借金が1億円あり、配偶者と子2人が相続人の場合
配偶者は5000万円、子2人はそれぞれ2500万円の債務を承継します。
2-2. 想定事例
被相続人に債務はないが、推定相続人である自分に借金がある場合
この場合には、速やかに生前対策をとる必要があります。
具体的には、推定相続人は、時効援用、破産・再生により債務をなくすか圧縮しておきましょう。
(例)親の遺産4000万円、推定相続人は子だけ。子の債務5000万円
この事例で、子が債務について、生前に時効援用や破産をしたとします。その後に、親が亡くなって相続が発生した場合、子に残る資産は4000万円です。一方で、子が債務を放置していた場合はどうでしょうか。
その場合には、全ての遺産はとられて残る資産は0(債務残1000万円)です。
このように、被相続人には多額の遺産があるが、推定相続人には多額の債務がある場合には、その推定相続人は何らかの債務整理をしておく方が得策です。
請求されていない、夜逃げをしたなどで債務を放置していると、遺産は弁済にまわされますので、注意しましょう。
推定相続人が生前に破産などの債務整理をしていない状況で相続が発生した場合
上記の事例で、推定相続人が生前に破産などの債務整理をしていない状況で相続が発生した場合、他の相続人がいる場合には、相続放棄をした方が得策です。
相続放棄をしないで相続をした場合には、自分に残る資産は0(残債務1000万円)になるからです。
借金のある相続人は相続放棄をして、破産や債務整理をしましょう。借金が多額にある状態で相続を受けられる事態となっても、判例上、相続放棄は各人の自由となっており、問題ないからです。
相続放棄と破産等が完了した後に、税務面を考慮して、他の相続人からテクニカルに貸付、贈与等を受ければ、実質的に財産を保有することができます。
この方法は、テクニカルな処理が必要になりますので、相続や債務整理の両方に精通した弁護士に相談することをお勧めします。
被相続人に借金も資産も同じ位ある場合
この場合、資産と借金をまずは把握するために調査を速やかに行う必要があります。相続放棄の期限は、原則、死亡を知ってから3カ月以内だからです。
その結果、債務超過である場合には、相続放棄か限定承認を検討します。
もっとも、債務が1億円、遺産が9000万円だったとしても、債務の返済が分割の場合には、遺産の9000万円を有効活用することもできます。そのような場合には、さらに相続放棄をするか熟慮が必要です。
このような事案では判断は難しいですので、債務と相続問題に詳しい専門家に相談することをお勧めします。
プラスの遺産も借金もあり、債務より遺産の方が多い場合の遺産分割協議
債務は、相続人が複数いる場合には、分割されて相続分に応じて承継されます。
遺産を取得しないという遺産分割協議書を締結しても、債務があれば債権者は各相続人に相続分に応じた返済を求めることができますので、注意が必要です。
遺産分割協議書で特定の不動産を取得した相続人は、その不動産にかかる債務(住宅ローンなど)の負担を引き受けるとすることが一般的です。
もっとも、債権者の同意がなければ、その合意は相続人間だけで有効ですので、債務を特定の人が承継する遺産分割協議を考えている場合は、債権者である金融機関との事前協議、事後手続きが必要です。
遺産は取得しなかったが、債務だけ承継をしてしまったということがないように、注意しましょう。難しいと思った場合には、安易に当事者同士で遺産分割協議書を作らず、弁護士などに相談しましょう。
3. 相続税申告
債務は、相続税の申告の際に、遺産から差し引くことができます。簡単にいうと、遺産が1億円あって債務が6000万円ある場合は、相続税の計算上は4000万円とされます。
誰がその債務を承継したか、代償金を支払ったかによって、各人の相続税も変わってきますので、迷ったら相続税に詳しい専門家に相談してみましょう。
まとめ
借金と相続の問題は、どの手続をとるか、準備をするかによって、残せる金額が大きく変わってきます。
相続で遺産が入っていることが見込まれる場合には、自分の借金を放置しておくことは得策ではありません。
テクニカルな分野ですので、相続や債務について精通している弁護士に相談しましょう。
当事務所のサポート
当事務所は、相続と債務(借金)に特化した法律事務所です。
相続と借金が関連する場合、適切に対策・手続きをとることで、かなり残せる金額が変わってきます。
自分の債務を放置してしまっている方、親の遺産と債務について心配な方は、事前にご相談されておくことをお勧めします。
破産と相続、時効と相続、再生と相続、親に破産をしてもらった後の相続、相続放棄、限定承認など、色々な組み合わせが考えられる分野で、債務と相続の両方の知識・経験が必要です。
相続と債務の組み合わせが得意な当事務所に、ぜひお気軽にご相談ください。