会社破産後に再起するためのアドバイスと注意点

会社の破産は経営者にとって非常に辛い経験ですが、これは新しいスタートを切る機会でもあります。破産手続きが完了した後、または並行して、経営者が再び事業を立ち上げたり、別のキャリアに進んだりすることができます。

以下に、破産後の再起を目指す経営者が知っておくべき法的なアドバイスを紹介します。

1. 法的に問題を抱えないよう法人破産手続きを完了させる

まず、会社の破産手続きを、適切に終了させましょう。破産管財人とのやり取りを終え、必要な書類を提出し、裁判所から破産終結又は廃止の決定を受けます。

これにより、破産手続きが正式に完了し、会社の債務は消滅します。

1-1. 破産手続きを適切に完了させる

破産管財人への協力

破産手続き中および終了後も、破産管財人への協力が求められます。破産管財人は、会社の財産の管理・処分を担当し、不正な資産隠しや債権者を害する行為がないかを調査します。
経営者は、これらの調査に誠実に対応し、必要な情報提供を行う義務があります。破産管財人から求められた説明事項や提出書類には、真摯に対応しておきましょう。

破産終了の決定の確認

裁判所からの正式な書面を受け取ることで、手続きが完了したことを確実にします。代理人が入っている場合には、代理人に届きます。

2. 個人保証債務への対応

会社の借入金などに対して個人で連帯保証をしていた場合、破産後もその債務が残ることがあります。連帯保証人としての責任をどう解決するかは、再起のための大きなステップです。

2-1. 個人破産の検討

連帯保証債務が大きい場合

個人での返済が難しい場合は、個人破産を会社破産に合わせて検討します。これにより、保証債務の免除が受けられます。

個人再生の活用

個人破産を避けたい場合は、個人再生を検討します。会社破産を担当する弁護士か、個人再生に詳しい弁護士に相談しましょう。

2-2. 借金の整理と再交渉

債権者と交渉する

連帯債務が多額でない場合は、一部の債務が減免されることを目指して、金融機関や債権者と任意整理することが考えられます。もっとも、大幅な減額は期待できません。

3. 法的責任の追及リスク

破産手続き終了後は、基本的に経営者個人は会社の責任は負いません。

もっとも、会社運営において不適切な行為があった場合には、民事・刑事上の責任を問われることがあります。

3-1. 会社法違反による責任

破産手続き前に、会社の財産を不正に処分したり、債権者を害したりした行為を行った場合、経営者は法令違反の責任を問われる可能性があります。

たとえば、資産隠しや破産直前の特定債権者への優先的な返済などは、破産法で禁止されています。

民事責任 

  • 特定の債権者に対する不当な優先弁済があった場合、否認され返済金を返還する義務が生じることがあります。

刑事責任 

  • 詐欺破産罪など、悪質な場合には刑事罰が科されることがあります。

予防策

  • 法律に従った適正な対応を心がけ、不正行為に関わらないようにする
  • 破産申立前から禁止事項などの説明を受け、弁護士と相談しながらしていいこと、してはいけないことを区別していく

4. 再起のための新しい事業立ち上げ

会社破産後、再度起業を目指す場合には、注意すべき法的および経営上のポイントがあります。特に、過去の失敗を教訓に、慎重な経営を心がけることが成功の鍵です。

4-1. 新たな法人設立の手続き

法人設立の基本的な流れ

会社登記を行い、事業を新たにスタートさせます。法務局での登記申請が必要です。個人も破産をした場合には、免責決定後にしましょう。

信用回復の工夫

新たな事業を立ち上げる際、金融機関や取引先の信頼を得るために、計画性を持ったビジネスプランを作成します。個人代表者も連帯保証などで破産をした場合には、5年~10年間は信用情報上、借入は厳しいです。

4-2. 法的な制約の確認

役員就任の制限

破産した会社の役員であったとしても、新たに役員になることに一般的制限はありません。
特定の資格や業界によっては、制限が設けられていることがありますので、事前に確認が必要です。

再起支援プログラムの利用

地方自治体や政府機関による再起支援プログラムを活用することで、新たなビジネスの立ち上げを支援してもらうことができます。

4-3 破産会社の資産の有効活用

破産会社からの資産譲渡

破産する会社から、代表者個人や別会社に資産を移転させることは、詐害行為といって不適切な行為に当たる可能性があります。破産会社の債権者への配当財産減少行為となるからです。

一方で、破産会社の財産を時価以上で買い取ることは、破産会社の債権者を害する行為にならない可能性があります。この時価以上の買い取りは、場合によっては、事業再起を目指す代表者と債権者いずれにとってもプラスになることがあります。

もっとも、詐害行為に当たらないように、法人破産に精通した弁護士と協議しながら進めるようにしましょう。うまくいけば、その資産を活用して事業の再起を図ることができます。

5. 信用情報と資金調達

個人破産手続きにより信用情報機関に破産情報が登録されると、一定期間は金融機関からの借入が難しくなります。再起する際には、資金調達の工夫が必要です。

5-1. 信用情報の回復

信用情報の管理

破産情報は信用情報機関に5~10年間記録されますが、その期間中もクリーンな経済活動を行うことで、将来的な信用回復を目指します。

資金調達の工夫

自己資金の積み立てや、親族からの借入れを検討するなど、通常の金融機関を使わずに資金調達を行う方法を模索します。また、クラウドファンディングなどの新しい資金調達手法も選択肢です。

5-2. 公的支援制度の活用

政府や自治体の融資制度

起業家支援のための公的な融資制度を利用することで、資金を確保することが可能です。

創業支援プログラム

地方自治体や商工会議所が提供する創業支援プログラムに参加し、資金面や事業運営面のアドバイスを受けることを検討します。

6. 事業運営の健全化と法的遵守

再起を目指すには、過去の失敗を教訓にして、健全な事業運営と法的な遵守が必要です。リスク管理を徹底し、トラブルを未然に防ぐ経営が求められます。

6-1. 内部管理体制の構築

財務管理の強化

定期的に財務状況を確認し、必要に応じて税理士などの専門家の意見を求めます。予算管理や収支の分析を行い、経営状態を常に把握することが必要です。

コンプライアンス体制

法律を守ることはもちろん、労務管理や取引契約の適正化を徹底します。特に、税務申告の遅延や社会保険の未納を防ぐことで、会社の健全性を保ちます。

6-2. リスクマネジメント

経営リスクの分散

事業の多角化や、経営パートナーとの協力を通じて、リスクを分散させます。また、危機に備えた資金計画を事前に策定しておくことが望ましいです。

7. 個人としてのキャリア構築

再起に向けた事業活動が難しい場合には、別のキャリアを選択することも考慮に入れる必要があります。スキルを活かした転職や、コンサルティング業務など、多様なキャリアの選択肢を検討します。

7-1. セルフブランディング

破産を教訓に

過去の経験を学びに変え、自分自身の価値を高める活動を行います。講演活動や執筆活動を通じて、同じような経験をしている人々にアドバイスを提供することも、信用回復に繋がります。

7-2. スキルアップ

専門スキルの習得

新しい事業分野に進出するためのスキルを学ぶことや、資格取得を目指すことで、再就職や新事業の成功確率を高めることが可能です。

まとめ

会社破産は経営者にとってつらい経験ですが、それを糧に再起のチャンスを掴むことができます。

場合によっては、破産会社の資産や事業を上手に活用して、事業の再起を図ることもできます。詐害行為にならないように、破産、再生に精通した弁護士に相談しましょう。

当事務所のサポート

当事務所では、ご希望に応じて、破産申立前から破産後の再起を視野に入れて、手続きを進めていきます。破産会社の資産には、時価は低いが事業再生を目指している代表者にとっては、価値の高い物もあります。そのような物を活用して、再起を図ることも方法の1つです。

ぜひ、法人破産、再生に精通している当事務所の弁護士に相談してみてください。

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