個人事業をしている場合には、事業借入金などが膨らんだり個人事業の収益が減少したりして、返済ができなくなることがあります。このような状況に陥った時、どのように対応していくべきでしょうか。
ここでは、個人事業と債務整理、特に個人事業者の破産、再生との関係について、説明をしていきます。
このページの目次
1. 任意整理
事業収益が一時的に低下しているだけの場合は、任意整理を検討します。もっとも、元本は減らせないことが多いので、継続的に事業収益が低下している場合には適しません。
任意整理は、債権者と交渉し、借金の返済条件を見直す手続きです。自分で行う場合と弁護士などの専門家に任せるパターンがあります。
メリット
- 手続きが簡易で、コストも比較的抑えられる
- 債務整理を行う債権者が選ぶことができる
- 弁護士が入ると督促がとまる
デメリット
- 債権者の同意が必要で、合意が得られない場合は失敗する
- 交渉が難航する場合、他の方法を選択する必要がある
- 債務の大幅な減額は期待できない
どのような場合に適しているか
資金繰りの問題が比較的軽微、短期で、事業の見通しが明るい場合に採用します。
2. 法的手続きによる整理
事業の債務が多額で、任意整理だけでは解決できない場合、裁判所を利用した法的手続きを検討することが必要です。これには、「民事再生」「会社更生」「破産」の3つの手続きがあります。
会社更生は個人事業では使われませんので、説明を省略します。破産と再生の特徴を見ていきます。
2-1. 個人再生
個人再生は、個人事業を続けながら借金の大幅な減額を目指す再建型の手続きです。再生計画を策定し、裁判所を通じて債権者の承認を得ます。
メリット
- 事業の継続が可能で、事業用財産もそのまま利用できる
- 借金を5分の1程度に圧縮できる
- 事業用財産以外も残すことができる(ただし、所有権留保のある財産は残せない)
- 破産というイメージを回避できる
デメリット
- 過半数の債権者から再建計画の承認が得られないと手続きが破綻する(ただし、ほとんど承認される)
- 事業自体の収益性があることを前提とする
適用例
事業収益がでていて、債務が5分の1程度に圧縮できれば事業を継続できる場合
2-2. 破産手続き
破産手続きでは、基本的に個人事業を停止して全ての財産を清算することを想定しています。
もっとも、債務がなくなれば事業が継続できる場合には、個人事業を継続しながら破産をすることもあります。
メリット
- 債務の全てがなくなる(非免責債権を除く)
- 事業を継続できる可能性がある
- 債権者の同意は不要である
デメリット
- 売掛金や在庫の一部を回収されるリスクがある
- 事業の信用が低下し、今後の事業活動に支障が出ることがある
適用例
個人事業を継続したいが個人再生の債務圧縮率5分の1程度ではなく、全ての債務を消滅させたい場合。
個人事業の債務整理を検討する際の注意点
個人事業主の債務整理は、単に債務を軽減させるだけでなく、事業や経営者の将来にも影響を与えます。専門家のサポートを受け、計画的に進めることが必要です。
具体的には、以下の点に注意する必要があります。
現状の正確な把握
債務といっても借金、リース債務、買掛金、分割金などと色々ありますので、債務の総額を適切に把握する必要があります。
迅速な対応
債務問題は時間が経つほど状況が悪化することが多いため、早めの弁護士への相談が重要です。
適切な選択肢があっても、財産が底をついた場合には、その方法を採用できなくなります。その場合には、ずっと督促と向か合わなくてはならなくなるからです。
ファクタリングや闇金などは、その場しのぎです。また、その後の破産や再生に悪影響を与えますので、控えましょう。
法的知識の活用
債務整理に精通した専門家の協力を得ることで、より適切な手続きを選べます。一人で悩まず、専門家に相談しましょう。
まとめ
個人事業主が抱える債務を整理するためには、いくつかの選択肢があり、状況に応じた適切な方法を選ぶ必要があります。
当事務所は、事業者の破産、再生に強みを持つ法律事務所です。財産が底をつく前に、早めに相談してください。場合によっては、個人事業を継続する方法があるかもしれません。
まずは事業者の破産・再生について豊富な経験を持つ当事務所に、お気軽にご相談ください。