相続手続きが複雑化した場合の解決方法

相続手続きは、財産の種類が多い、相続人が多い、相続人が遠方に住んでいる、または被相続人の財産状況が明確でない(評価が難しい)などの理由で複雑化することがあります。

こうした状況に直面した場合、どうしたらいいでしょうか。相続手続きが複雑化する原因と、それを解決するための具体的な方法について解説します。

1. 相続手続きが複雑化する主な原因

相続手続きが複雑になる理由は多岐にわたりますが、代表的なものを以下に挙げます。

1-1. 相続人が多数いる場合

相続人の数が多いと、全員の合意を得ることが難しくなります。一人でも反対の人がいれば、合意形成できないからです。

特に、親族同士の関係が希薄な場合や、遠方に住んでいる相続人がいる場合、相続手続きが放置されて何世代かの間で協議が必要な場合などでは、遺産分割協議がスムーズに進まないことがあります。

1-2. 遺言書の内容が不明確または存在しない場合

遺言書が適切であれば手続きがスムーズに進むことが多いですが、遺言書の内容が不明確であったり、結局は共有とする遺言などの場合は、相続人間の対立が生じやすくなります。

1-3. 財産が複雑または所在が不明な場合

不動産が複数の地域にある、海外に財産がある、または借金や保証債務が含まれている場合は、財産の評価や管理が複雑になります。また、財産の一部が不明(隠している場合含む)な場合も問題を解決するのが難しくなります。

1-4. 相続人同士の意見の相違

財産分割に関する意見の相違や、評価額、感情的な対立が原因で協議が難航することがあります。例えば、一方が不動産を取得して、もう一方がその対価を取得する場合のように、分け方では一致しているにもかかわらず、評価方法(代償金額)でもめている場合には、解決が難しくなります。

2. 相続手続きが複雑化した場合の解決方法

相続手続きが複雑になった場合、以下のような解決方法を検討することが効果的です。

2-1. 専門家の活用

弁護士への相談

相続人間でトラブルが生じている場合は、弁護士に相談することで法的なアドバイスを受けられます。まずは相続に精通している弁護士に相談して、自分の主張が法的に正しいのか、相手方が主張していることが正しいのか確認しましょう。

弁護士が代理人として交渉に入ることで、感情的な対立を抑え、法的な話し合いを進めることが可能となります。また、複雑な法律問題も専門的にサポートしてくれます。

登記申請や相続税申告の依頼

相続財産の登記手続き、相続税の申告が必要な場合は、専門家に一任して、手続きを全て任せることができます。期限がありますので、注意しましょう。

2-2. 家庭裁判所の遺産分割調停

調停の申し立て

相続人間の話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てることができます。調停では、裁判所が指名した調停委員が相続人間の話し合いを仲介し、公平な解決を目指します。調停が成立すると、その内容に基づいて遺産を分割します。

調停が不成立の場合は審判へ

調停でも解決できない場合は、家庭裁判所が最終的な判断を下す「審判」に移行します。審判では、裁判官が法的な観点から遺産分割の内容を決定しますが、裁判所の判断に従わなければならないため、相続人全員の意見が反映されるとは限りません。

3. 複雑な相続財産の整理方法

財産の種類や状況によっては、相続財産の整理が難しくなることがあります。その場合、次のような対策を講じることが有効です。

3-1. 財産の評価と分割方法の選択

不動産の評価

不動産がある場合、評価額を明確にすることが重要です。固定資産税評価額、路線価、不動産業者の査定など、いくつかの評価方法があります。

どの評価方法を採用するかを協議して、まずは評価方法の合意をはかりましょう。それに基づいて遺産分割協議を進めます。

評価方法が一致しない等の理由から、安易に共有とすることは勧められません。不動産が共有名義になると将来のトラブルを招く可能性があるため、売却して代金を分割する「換価分割」や、特定の相続人が取得して他の相続人に代償金を支払う「代償分割」などを検討しましょう。共有は、問題の先送りです。

海外財産や特定財産の管理

海外にある財産や未上場株式などの資産がある場合には、より遺産分割協議の難易度は上がります。国際相続や税務に精通した専門家に相談、依頼をしましょう。

3-2. 負債や保証債務の処理

負債がある場合の対応

被相続人の負債が多い場合、財産と負債を比較して相続放棄や限定承認を検討します。限定承認を行うと、プラスの財産の範囲内でのみ負債を支払うことができます。

もっとも、予納金が高額であったり、相続人全員の合意が必要であるなどデメリットがあり、余り活用されていません。

相続放棄は、相続開始から3か月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があるため、早めに準備しましょう。

4. 相続人間のトラブルを解決する方法

相続人間の感情的な対立や意見の違いを解決するためには、次のような方法が有効です。

4-1. 冷静な話し合いの場を設ける

第三者を活用

専門家が関与していない場合には、法律に則らない分け方を強制されたり、過去のこと等が蒸し返されて感情的になりやすいです。弁護士に依頼した場合には、他の相続人と連絡をとらなくてよくなりますので、冷静に法的な協議を進めて行くことが可能になります。

事実・法律に基づく解決

感情ではなく、財産評価や分割方法を法律に基づいて進めていくことなります。

4-2. 感情的なトラブルを回避するための工夫

感情のしこりを解消する努力

相続は過去の家族関係が顕著に表れる事案です。相続を機に縁を切られる方もいらっしゃいますが、できれば双方が納得した解決が望ましいです。

交渉を継続していくと家族(親族)関係が崩壊しそうで心配な場合は、弁護士などの専門家に一度相談してみましょう。

5. 遺言書の作成と活用

相続人間のトラブルを未然に防ぐためには、被相続人が生前に適切な遺言書を作成しておくことが効果的です。もっとも、不適切な遺言書を作成したことによって、紛争が発生することもあります。

5-1. 公正証書遺言の作成

法的効力のある遺言書

遺言書は、公証役場で作成する「公正証書遺言」にすると、法的な効力が強く、遺言内容に従って円滑に相続手続きを進めることができます。検認の手続きが不要ですので、お勧めです。

遺言執行者の指定

遺言書の中で「遺言執行者」を指定しておくと、遺言の内容をスムーズに実行できるため、相続人間のトラブルを防ぐことが可能です。もっとも、費用が発生することがありますので、必要かどうか検討が必要です。

5-2. 遺言書がない場合の対策

話し合いの前提を整える

遺言書がない場合は、相続人全員が話し合いの前提を共有することが大切です。相続人の確定、相続分の確定、遺産・評価方法の確定などです。その後は、全員が納得できる形の合意形成を行うことになります。

まとめ

相続手続きが複雑化した場合、感情的な対立や法的な問題が絡むことが多く、適切な解決方法を取らないと、紛争が長期化するリスクがあります。特に、そのまま放置した場合や共有にした場合には、問題の先送りにしかなっていません。

弁護士などの専門家に依頼することで、手続きをスムーズに進め、紛争をその時に解決しましょう。次世代に法的問題を先送りしないためにも、遺産分割協議を完了させる必要があります。

当事務所のサポート

当事務所では、難解な相続手続きを数多く受任しています。相続が複雑化した場合の助言、遺産分割協議の代理を行います。相続トラブルや財産の整理に関するお悩みがある方は、ぜひご相談ください。放置することは厳禁です。相続の経験豊富な弁護士が対応いたします。

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