遺産分割協議は、相続人全員の同意が必要なため、財産の分配方法で意見が一致しない場合や感情的な対立があると、協議が長引くことがあります。
こうした状況に直面した場合、感情的な争いを避けながら適切に解決する方法を見つけることが重要です。以下では、遺産分割がうまくいかない場合の解決策と、調整を進める際のポイントを解説します。
このページの目次
1. 話し合いの工夫
遺産分割が進まない主な原因は、感情的な対立、法定相続分以上に極端に多く遺産を取得しようとすること、特別受益・寄与分への誤解(介護をしたこと等の過剰な評価)、評価方法の誤解、自分の言いなりに兄弟姉妹がなるという誤解、過去の出来事などです。
このような場合、各原因毎に工夫を取り入れて遺産分割協議を進めて、その誤解などを除去することが大切です。
1-1. 冷静に話し合う
法的な協議を冷静にする必要性
遺産分割協議は、過去の思いや感情を伝える場ではありません。色々な思いがあるかもしれませんが、法的に関係ないことは、捨象して意見交換する必要があります。
自らの法的な相続分はどの程度なのか、それをふまえて相手方が言っていることは、不合理なのかなどを理解する必要があります。
自らが不合理な主張に終始している場合には、自らの理解などを見直す必要があります。調停や審判になってしまっては解決まで長期間を要しますし、結局は法定相続分での解決となります。
相互に譲歩の余地がないかなど、冷静に法的な話し合いをする必要があります。
1-2. 専門家に相談・依頼する
弁護士に相談する
家族だけで話し合うと感情的になったり、法的に正解がわからず無駄な話し合いになってしまうことがあります。相互に納得していない場合に、法律的な正解がわからないまま話し合っても無駄です。まずは、調停・審判になった場合に、どのような判断になるかを見通しましょう。
これが、どこまで譲歩して交渉するか等前提としての判断材料になります。相続に精通した弁護士が入った場合は、通常、調停や審判に移行した場合の判断を見通します。
当事者同士の話し合いを無理に長期化させず、早い段階で専門家である弁護士に相談して、アドバイスを取得しておきましょう。トータルの解決までの時間が短縮されることがあります。
2. 具体的な分割方法の調整
不動産が1つだけでうまく分割できないときの遺産分割方法の調整について、選択肢と注意点を説明します。
2-1. 代償分割の検討
代償金を支払う方法
たとえば、不動産を一人が相続する代わりに、他の相続人に代償金(現金)を支払う方法です。この方法を用いることで、財産の価値を公平に分けることができます。代償金を支払える資力がないと採用できませんが、居住を継続できるなどのメリットがあります。
2-2. 換価分割の選択
財産を売却して現金化
不動産を売却し、売却代金を相続人全員で分ける方法です。これにより、分割が難しい財産でも、現金として平等に分配できます。不動産の売却方法、期限、条件などを決める必要があり、譲渡所得税の負担などにも配慮する必要があります。
2-3. 共有の回避
遺産共有はなるべく避けましょう
話し合いがつかず、やむなく遺産を共有状態にすることがあります。もっとも、遺産共有は、分割問題の先送りです。次世代に負担を残すことになりますので、なるべく避けましょう。
3. 家庭裁判所での調停・審判
相続人間の話し合いでどうしても合意できない場合は、裁判所の関与する手段を検討します。
3-1. 家庭裁判所での遺産分割調停
調停の申し立て
遺産分割調整が進まない場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てます。調停では、裁判所が指名する調停委員が中立の立場で相続人間の調整を行い、合意を目指します。
もっとも、調停申立前に弁護士に依頼して、調停移行前に合意ができないか、改めて弁護士が代理交渉をすることが一般的で、それでも合意できない場合に、やむなく調停に移行します。
調停のメリット
相手方が法律や判例の解釈を誤っている場合などは、調停委員から中立的な立場で法的な説明をされることにより理解が正され、合意に至ることがあります。また、基本的には感情論は抜きにして調停委員を挟んで協議しますので、冷静に法的な話し合いが進みます。
調停が成立すれば、その内容は法的に拘束力を持つことになります。
3-2. 調停が不成立の場合は審判へ
審判の申し立て
調停でも合意できない場合は、家庭裁判所が遺産分割を強制的に決定する「審判」に移行します。審判では、裁判官が相続法に基づいて財産の分割方法を判断します。相続人の意見が完全には反映されないこともありますが、法的な結論を出すことができます。
4. 対立を和らげる工夫
相続は、家族の出来事や思いが関係するため、対立が長期化しやすいものです。以下の工夫を取り入れて、協議を進めましょう。
4-1. まとまらない原因の把握
原因の把握
話し合いがまとまらない場合、個別に意見を交換し、何がまとまらない原因となっているかを把握することが重要です。まとまらない原因を把握していなければ、戦略的な交渉は不可能です。それぞれの希望や思いを聞いたうえで、何がまとまらない原因となっているか把握しましょう。
交渉は引いて押してです。自分に非がある場合には、率直に非を認めてその後の交渉に臨むのも1つの手です。原因がわかったら、その原因の解決にはどのような手段があるかを検討しましょう。
4-2. 専門家に相談してみる
専門家(弁護士)の助けを借りる
当事者の話し合いでは、どんどん悪い方向に進んで行ってしまうことがあります。そのような状態になって話し合いを継続することは、遺産共有状態が長くなり、解決までの期間も長くなってしまいます。
自分たちだけでは解決することが難しいなと思ったら、まずは無料相談でもいいので、相続の専門家に相談してみてください。自分の誤解が原因ということもあります。問題を抱え込まず、相続に精通している弁護士の話を聞いてみてください。
その後に、弁護士に依頼した方がいいのか、従前どおり話し合いを継続するのかを決めて、進めればいいのです。
各専門家の主な区分けは以下のとおりです。問題に応じて、専門家に相談しましょう。
弁護士のサポート
▶︎ 法的なアドバイス
相続の経験を多く有する弁護士は、遺産分割協議に関する知識、経験を持っており、どのように進めれば合意が図れるか、戦略的に有利になるかなどを検討して、見通しを立ててくれるはずです。
特に、感情的な対立が深刻な場合や遺産分割協議が精神的負担になっている場合は、弁護士を代理人とすれば交渉自体を自分でしなくてよくなります。
また第三者が入ったことで、感情論を抜きにした法的な話し合いをすることにより、一挙に解決できる場合があります。
税理士の活用
▶︎ 財産の評価や税務相談
相続税の申告・納税が必要な場合は、相続税に精通した税理士に相談することを検討します。特に、高度な算定が必要な不動産や未上場株式がある場合には、税理士に任せることをお勧めします。
司法書士による登記手続き
▶︎ 名義変更や書類作成の代行
司法書士は不動産の名義変更の作成をサポートしてくれます。自分で不動産の登記移転手続き難しい場合には、専門家に依頼することを検討しましょう。
まとめ
遺産分割協議がうまくいかない場合、早期にまずは弁護士に相談してみてください。依頼をするか検討するために相談してもいいのです。自分の考えていたことや他の相続人が言っていることが間違いであることが分かることもあります。
その誤解を持ったまま交渉を継続しても解決できません。第三者に相談することにより、精神的にも負担が軽くなることがあります。
当事務所のサポート
当事務所では、遺産分割協議の代理交渉、遺産分割協議書の作成、不動産売却、登記移転、相続税の申告まで、すべてご相談いただくことができます。遺産分割協議がまとまった場合にも、相続税申告や登記で他の税理士さんや司法書士さんを探していただく必要はありません。
まずは、相続に特化した弁護士に相談してみてください。新しい提案があるかもしれません。経験豊富な弁護士が親身になって解決に向けたサポートをいたします。