相続人間のトラブルを解決する方法

相続は、家族や親族の関係に大きな影響を与える問題であり、精神的負担になることも多い案件です。トラブルが起きた際に、どのように対応すべきか知っておく必要があります。ここでは、相続人間のトラブルを解決する具体的な方法と、それぞれのメリットと注意点について説明します。

1. 話し合い(遺産分割協議)

まずは相続人同士で、冷静に話し合うことが基本です。遺産分割協議は、全員の合意がなければ成立しないため、相続人同士が互いに妥協点を見つけることが求められます。

1-1. 話し合いの進め方

感情を抑えて協議する

相続は感情的になりやすい問題ですが、冷静に話し合うことが重要です。全員が納得しなければ結局遺産分割協議は成立しないからです。相手の希望を踏まえながら、妥協点を見出しましょう。

財産の全体像を把握する

相続財産がどのようなものかを、相続人全員が共有することから始めます。財産目録を作成し、評価額をそれぞれ記載します。これが、遺産分割協議の前提となります。

遺産が不明な場合には、財産調査を行うこともあります。不動産の評価自体で合意が得られず、遺産分割協議がまとまらない場合もあります。

1-2. 交渉の工夫

専門家に相談する

家族内で話し合いが難航する場合は、依頼するか決定していない段階でも、早い段階で専門家に相談してアドバイスをもらうといいでしょう。誤解や勘違いがクリアになったり、そのような解決方法があるのかと気づくことがあります。

譲歩と妥協

すべての相続人が自分の希望を100%満たすのは難しいため、譲歩し合うことが円満解決の鍵です。特に、不動産の分け方や金銭の調整には工夫が必要です。

2. 弁護士へ代理交渉を依頼する

相続人同士の話し合いでは解決が難しい場合や話し合い自体が精神的負担になってきた場合は、弁護士に代理交渉を依頼することを検討しましょう。

2-1. 弁護士が提供するサポート

遺産目録の作成

弁護士が入った場合、通常は①遺産の確定、②遺産の評価、③遺産分割協議という流れをとります。一般の方同士の話し合いでは、遺産の確定と評価が抜けていることが多いです。これをしないと法的な遺産分割協議はできません。また、相続税の申告の有無の検討もできません。

交渉代理人としての役割

弁護士が相続人との交渉を代理することで、感情的な対立が抑えられ、法的な話し合いが可能になります。弁護士が入ることで、相手側の納得度が上がることも期待されます。

2-2. 弁護士に依頼するメリットとデメリット

メリット

他の相続人との話しあいが重荷となっている場合には、精神的負担から解放されます。交渉は弁護士が行うからです。

また、遺産が判明していない場合や評価が難しい案件についても、弁護士が入ることにより遺産目録などが作成され、交渉の前提が整理され、分割案について代償金案など複数の案が検討ができることがあります。

デメリット

弁護士費用が発生するため、金銭的な負担があります。遺産分割協議の負担と弁護士費用を天秤にかけて、決定しましょう。

3. 不動産登記や相続税申告も考慮する

相続には相続税申告や不動産登記の問題も絡んできます。個別に税理士や司法書士に相談するか、登記や相続税の申告もできる弁護士に依頼を検討しましょう。

3-1. 税理士のサポート

相続税の申告

相続税の計算は複雑であり、税理士のサポートを受けることで正確な申告ができます。相続税の負担を軽減するための節税対策もアドバイスしてもらえます。

財産評価の適正化

特に不動産などの評価額を正確に算出し、相続税を適正に計算することが重要です。

3-2. 司法書士のサポート

不動産の名義変更

相続による不動産の登記手続きは司法書士に依頼するとスムーズに行えます。登記に不備があるとトラブルになることがあるため、専門家に任せるのが安心です。

遺産分割協議書の作成

弁護士や司法書士は、相続人全員の合意を記録する遺産分割協議書の作成を行います。

4. 家庭裁判所の調停

話し合いで合意に至らない場合は、家庭裁判所の「調停」を利用することになります。

4-1. 調停の手続き

調停の流れ

家庭裁判所に調停の申し立てを行うと、調停委員が中立的な立場から話し合いを仲介します。法律的な観点からアドバイスを提供しつつ、相続人間の合意を促します。

合意に達した場合

調停で合意が成立すると、「調停調書」が作成されます。この調書は判決と同じ法的効力を持ちます。

4-2. 調停のメリットとデメリット

メリット

当事者の意向を考慮した柔軟な解決が可能であり、早い場合は3カ月~6か月くらいで終了する場合もあります。調停委員が相続人の間に入って相互から話を聞く形となりますので、直接的な対立は軽減されます。

デメリット

評価、特別受益、寄与分などの複数の争点があると、1年以上の期間を要する場合があります。自分で調停を行うと、調停継続に不安を感じる方もいらっしゃいます。法的な正解がわからないまま進んでいくからだと思われます。

5. 家庭裁判所の審判

調停でも解決に至らなかった場合は、家庭裁判所が審判を行い、最終的な判断を下します。

5-1. 審判の特徴

法的な決定

審判では裁判官が法律に基づいて遺産分割を決定します。審判の内容は強制力があり、相続人はその決定に従わなければなりません。

裁判と異なる点

審判は話し合いを重視する調停とは異なり、裁判のような形式で行われますので、希望しない判断がされることがあります。

5-2. 審判のメリットとデメリット

メリット

長期間にわたるトラブルを一刀両断的に終結させることができます。

デメリット

審判までは1年以上の長期間を要することが一般的です。また、裁判所が一方的に決定するため、相続人全員が納得できる結果とは限りません。

6. 生前対策をしておく

将来的な相続トラブルを防ぐために、生前から対策を講じておくことも有効です。

6-1. 遺言書の作成

公正証書遺言の活用

遺言書を公正証書で作成することで、遺言内容が明確になり、遺産分割協議が不要になりますので、無用な遺産分割協議トラブルを防げます。遺言執行者を指定しておくことで、不動産登記移転などの遺言実行をしてもらうこともできます。

6-2. 家族信託の活用

財産管理のスムーズな引き継ぎ

家族信託を利用することで、高齢者の財産管理や承継を柔軟に行われることが期待できます。もっとも、歴史が浅い制度ですので、法的に不明確な部分も残されていますので、絶対的な過信はすべきではありません。

まとめ

相続人間のトラブルを解決するためには、相続人同士の冷静な話し合いを基本とし、それがとん挫した場合には、弁護士への依頼、調停・審判を検討します。紛争にならないように生前より遺産分割協議のイメージを共有しておいたり、遺言書を作成しておくことも有用でしょう。

感情的な対立を避けるために、相続人間のコミュニケーションを重視し、必要に応じて専門家の助けを借りながら解決を図りましょう。生前対策も視野に入れて、相続に備えることでトラブルを未然に防ぐことができます。

当事務所のサポート

当事務所は、相続のトラブルの解決に向けて、弁護士による交渉代理、調停・審判の追行、遺言書作成等の相続全般のサポートを行っています。また、相続税、登記にも対応しているという点が強みです。相続問題に直面している方は、ぜひご相談ください。相続経験豊富な弁護士が、お力になります。

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