
遺留分侵害額請求とは、遺言や生前贈与によって遺留分が侵害された相続人が、その侵害された分を取り戻すために他の相続人や受遺者に対して金銭を請求する手続きです。
遺留分は、法律で認められた最低限の相続分です。遺留分が確保されていない場合、法的に請求する権利があります。
このページの目次
1. 遺留分の基礎知識
遺留分は法定相続人に認められている最低限の取り分であり、法定相続分の一定割合が法律で保障されています。遺留分が認められる相続人は、配偶者、子、直系尊属(親など)です。一方、兄弟姉妹には遺留分はありません。
1-1. 遺留分の割合
配偶者や子が相続人の場合
法定相続分の1/2が遺留分として保障されます。たとえば、遺言で全ての財産が特定の相続人に譲られると記されていても、他の相続人は遺留分として自分の相続分の1/2を請求できます。
直系尊属のみが相続人の場合
遺留分は法定相続分の1/3となります。
2. 遺留分侵害額請求の要件
遺留分侵害額請求を行うためには、いくつかの要件を満たす必要があります。
2-1. 遺言または生前贈与による遺留分の侵害
遺言による侵害
遺言書の内容が、特定の相続人や第三者に多くの財産を譲ることを指定している場合、遺留分が侵害されることがあります。
生前贈与による侵害
被相続人が生前に一部の相続人や第三者に多額の財産を贈与していた場合も、遺留分が侵害されるケースがあります。
2-2. 請求の対象と期間
請求の対象者
遺留分侵害額請求は、遺産を多く受け取った相続人や、遺贈や生前贈与を受けた受遺者、受贈者に対して行います。
請求期限
遺留分侵害額請求権は、相続が開始されたことおよび遺留分が侵害されていることを知った日から1年以内に行う必要があります。また、相続開始から10年が経過すると、請求権は消滅します。
3. 遺留分侵害額請求の手続き
遺留分侵害額請求は、通常は交渉から始まりますが、合意に至らない場合は裁判手続きに進むこともあります。
3-1. 交渉による解決
話し合いによる解決を試みる
まずは、遺留分を侵害した相手方と交渉を行い、金銭での解決を目指します。生前贈与や評価が絡む遺留分の算定は結構難しいです。弁護士に依頼することで、遺産の評価、遺留分の算定が適切に行われ、スムーズな解決が期待できます。
合意が成立した場合
合意に達した場合は、遺留分侵害額請求に関する合意書を作成し、金銭の支払い方法や期限を明記します。
3-2. 裁判による解決
調停の申立て
交渉が難航する場合は、家庭裁判所に調停を申し立てます。調停では、裁判所の調停委員が仲介役となり、双方の合意を目指します。調停を飛ばして、訴訟を提起する場合があります。
訴訟(裁判)
調停でも解決しない場合は、訴訟に進みます。訴訟では、遺留分の算定や財産の評価が行われ、裁判所が最終的な判断を下します。
4. 遺留分侵害額請求の具体例
遺留分侵害額請求は、以下のようなケースで行われます。
4-1. 具体的なケース
ケース1
被相続人が遺言書で全財産を長男に譲ると指定していた場合。他の子が遺留分を請求することで、自分の遺留分を金銭で受け取る権利があります。
ケース2
被相続人が生前に一部の相続人に多額の金銭を贈与していた場合。他の相続人は、その贈与額を考慮に入れて遺留分を請求できます。
4-2. 財産の評価と算定
遺産の総額を把握する
遺留分を算定するためには、遺産の総額(遺留分算定の基礎となる財産額)を正確に把握する必要があります。不動産、株式、預貯金、生前贈与など、すべての財産を評価し、遺留分侵害額を計算します。
評価額に争いがある場合
不動産などの評価額に相続人間で争いがある場合は、専門家のアドバイスを受けることも検討すべきです。
5. 遺留分侵害額請求における注意点
遺留分侵害額請求には、いくつかの注意点があります。
5-1. 時効に注意
請求期限を守る
遺留分侵害額請求は、相続開始を知った日から1年以内に行わないと請求権が消滅します。期限を過ぎると請求ができなくなるため、早めに行動することが重要です。1年以内に請求した証拠を残すため、内容証明郵便で通知することが基本です。
5-2. 相続人間の関係に配慮
感情的な対立を避ける
遺留分侵害額請求は、相続人間の関係に影響を与えることがあります。しかし、請求を行う場合は、できるだけ感情的な対立を避け、法的な遺留分算定になるよう努めましょう。弁護士を介して話し合うことで、感情的な衝突を防げる場合があります。
6. 弁護士に依頼するメリット
遺留分侵害額請求は難解な法律問題、税務問題が絡むことがあるため、弁護士に依頼することでスムーズに手続きを進められます。
6-1. 法的アドバイスを受けられる
遺留分の算定や交渉をサポート
弁護士は、遺留分の計算方法や請求手続きについて専門的なアドバイスを提供します。交渉が難航する場合でも、弁護士が代わりに対応することで、法的な算定による金額を引き出すことが期待できます。
6-2. 交渉や裁判をスムーズに進められる
感情的な衝突を防ぐ
弁護士が間に入ることで、相続人間の感情的な対立を抑え、冷静な話し合いができるようになります。また、裁判になった場合も、必要な書類作成や証拠の準備を全面的にサポートしてもらえます。
まとめ
遺留分侵害額請求は、相続人の最低限の権利を守るための重要な手続きですが、その算定には難解な問題が伴います。請求の期限や財産の評価など、多くの要素を考慮する必要があります。
また信頼関係のない親族間では、交渉が進まないこともあります。スムーズに解決するためには、早めに弁護士に相談し、適切に法的に進めることが大切です。
当事務所のサポート
当事務所では、遺留分侵害額請求に関する相談、請求・交渉代理を多数行っています。遺留分侵害額請求の算定は意外に難しいものです。また、1年間という短期時効が規定されていますので、短期間で請求をする必要があります。
親族間の交渉を自ら行うと、感情的なやりとりもあったりして、なかなか解決ができない場合があります。弁護士に相談して、淡々と法的に解決してもらうことも1つの手です。
悩みがある方は、ぜひ遺留分侵害額請求に精通した弁護士にご相談ください。