遺産分割協議の進め方とトラブル回避のポイント

遺産分割協議は、被相続人の財産を法定相続人がどのように分けるかを話し合いで決める重要な手続きです。協議が円滑に進まない場合、相続人間のトラブルが発生することがあり、場合によっては裁判所での調停や審判が必要になることもあります。

ここでは、遺産分割協議の具体的な進め方とトラブルを回避するためのポイントを解説します。

1. 遺産分割協議の進め方

遺産分割協議を円滑に進めるためには、準備と協議の進行に注意が必要です。

1-1. 財産の把握

相続財産の調査

被相続人が所有していたすべての財産を把握します。プラスの財産(不動産、預貯金、株式など)とマイナスの財産(借金、未払いの税金など)をリストアップし、評価額を明らかにします。

不動産の評価は、色々な算定方法があります。具体的には、固定資産税評価額、路線価、不動産会社作成の査定書、鑑定士作成の鑑定書などです。

実際の遺産分割協議では、どの算定方法を採用するかという点だけでももめて、調停や審判に移行することがあります。

専門家への依頼

評価で特に難しいのが、不動産と未上場株式です。評価は、そもそも相続税の申告と遺産分割協議では算定方法が異なります。

不動産では、土地の形の補正、共有、建物の利用用途などで評価方法が異なることがあります。未上場株式は、一般的な時価がないなかで時価を算定する難しさがあります。

複雑な評価が必要になる遺産分割協議で、自分だけでは解決が難しいと考えた場合には、相続に詳しい弁護士に相談されることを検討してください。安易に適当な評価方法を提示して、長期的に解決しない事案となっていることがあります。

1-2. 相続人の確認

法定相続人の確定

被相続人や相続人の戸籍謄本などを取り寄せ、相続人を確定します。これにより、全ての相続人が協議に参加できるようにします。他の相続人がどこにいるかさえ分からない、連絡をとったこともないなどの場合には、弁護士に相談しましょう。弁護士は他の相続人の戸籍や住民票を取得出来ます。

1-3. 遺産分割協議

協議の方法

遺産分割協議の方法は、電話、手紙、LINEアプリなど、特に方法の指定はありません。財産が複数ある場合には、遺産目録を作成することもあります。

相続人間で意見がまとまらない場合、感情的な対立が予想される場合、そもそも遺産分割協議のやりとりが負担になる場合などは、弁護士に依頼することを検討しましょう。弁護士が入った場合は、弁護士が他の相続人とやり取りをしますので、負担が軽減します。

遺産の分け方を話し合う

法定相続分と遺産目録を参考にしながら、誰がどの財産を取得するかを決めていきます。遺言書がある場合は、その内容も尊重しますが、相続人全員が同意すれば遺言書と異なる分割も可能です。

相続税が発生する可能性がある場合や相続した不動産を売却して譲渡所得税がかかる場合には、そのようなことも考慮した分割が必要になります。

1-4. 遺産分割協議書の作成

協議内容の文書化

話し合いで決まった分割内容を、「遺産分割協議書」にまとめます。協議書には、相続人全員の署名と実印の押印が必要です。この協議書が、不動産の名義変更や金融機関での手続きに必要になりますので、間違いがないように作成する必要があります。

必要書類の準備

協議書の締結に際して、一般的に各相続人の印鑑証明書を添付します。

2. 遺産分割協議でのトラブル回避のポイント

遺産分割協議は、相続人同士の対立、遺産分割協議書が無効になってしまったなど、色々とトラブルとなりがちです。以下のポイントを意識することで、円滑な協議を進めることができます。

2-1. 相続人全員が参加すること

全員が同意することが必須

遺産分割協議は、相続人全員が同意しなければ有効になりません。一部の相続人が抜け落ちていたり、合意が得られなければ遺産分割協議書は完成しません。しっかりと法定相続人を戸籍で確認して、全員の印鑑証明書を取得しましょう。

印鑑証明書と遺産分割協議書で押印した実印が違う場合もありますので、確認をしましょう。

2-2. 事前に財産の分け方を考えておく

公平な分割を目指す

法定相続分を基準にしながら、各相続人にとって納得できる分割方法を事前に考えておくと良いでしょう。要するに、各相続人が何を重視しているかを把握することです。感情的な意見の衝突を避けるために、冷静な話し合いを心掛けます。

2-3. 感情的な対立を避ける

冷静に話し合う

相続は感情的になりやすい問題です。被相続人への思いや、過去の家族間の出来事が引き金となり、話し合いが進まなくなることがあります。感情的な対立を避けるため、法定相続分を考慮して冷静に話し合うことが重要です。

第三者の仲介を依頼する

相続人間でもめそうな場合や遺産分割協議自体が精神的負担になっている場合には、弁護士に依頼するのも有効な手段です。弁護士を入れないで当事者同士で長期間話がまとまらず、放置されている案件などがあります。さらに二次相続が発生して、次世代にリスクを先送りしている事案が散見されます。

弁護士を入れるということは、法的に公平に分割するということですので、気兼ねする必要はありません。

2-4. 不動産など分割が難しい財産は慎重に扱う

不動産の分割方法を検討

不動産が共有になる分割はお勧めしません。結局、後に分割が必要になり、紛争の先延ばしになるだけだからです。次世代で分割が必要になり、さらには関係者が増えて、より分割が難しくなることが多いです。

不動産を売却して現金化して分ける「換価分割」や、特定の相続人が取得して他の相続人に代償金を支払う「代償分割」などの方法を検討しましょう。

3. 遺産分割協議がまとまらない場合の対応

協議がどうしてもまとまらない場合は、法的な手続きを検討する必要があります。

3-1. 家庭裁判所での調停

調停の申し立て

協議が決裂した場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。調停委員が間に入って、相続人間の話し合いを仲介します。調停が成立すると、その内容に基づいて遺産を分割します。

3-2. 調停でも解決できない場合は審判

審判の手続き

調停でも合意が得られない場合は、家庭裁判所が遺産分割の内容を決定する「審判」に移行します。審判は裁判官が法律に基づいて判断するため、相続人の意見が完全に反映されるわけではありません。

4. 遺産分割協議に関わる法律のポイント

4-1. 遺言書がある場合の対応

遺言書の内容が優先

遺言書がある場合は、基本的にその内容に従って相続を進めます。ただし、相続人全員が同意すれば、遺言書と異なる内容で分割することも可能です。

4-2. 遺留分について

遺留分の権利

遺留分は、一定の相続人に保証された最低限の相続分です。相続人の中に遺留分を侵害されている人がいる場合は、他の相続人に対して遺留分の請求ができます。

まとめ

遺産分割協議は、相続人全員が納得できる形で進めることが理想です。しかし、相続人間の感情的な対立や意見の相違が原因でトラブルが生じることも多いのが現実です。

トラブルが予想される場合は、早めに弁護士や専門家に相談することで、協議自体の期間を短縮したり、精神的負担を軽減することが期待できます。

当事務所のサポート

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