相続で取得した不動産に、古い抵当権、根抵当権、その仮登記などが残っている場合があります。(以下、抵当権等といいます。) 抵当権等が残っていると、原則、不動産を売却できませんので、せっかく相続した不動産の価値が低下してしいます。
この古い抵当権等は、休眠担保権などと呼ばれます。不動産を将来売却するためには、休眠担保権を抹消しておく必要があります。
このページの目次
1. 休眠担保権の主な抹消方法
1-1. 共同申請
抵当権等抹消の基本的な方法になります。
抵当権者の所在が分かり、手続きに協力してくれる場合に利用します。
合併や事業譲渡がある場合には、現在の抵当権者を探索する必要があります。
1-2. 供託による抹消方法
弁済期から20年を経過し、かつ、その期間を経過した後に債権額・利息・損害金の全額を供託する方法です。抵当権者が行方不明の時に利用できます。
かなり古い抵当権の場合は、債権額が数千円~数万円程度となり、供託金額が低くてすみます。
1-3. 除権決定による抹消方法
裁判所に公示催告の申立を行い、除権決定を得る方法です。
債務が消滅していることが必要であり、実務的には弁済等により消滅していることを証明できることは少ないので、現実にはあまり利用されていません。
1-4. 弁済証書による抹消方法
完済した証拠書類(債権証書、並びに、債権及び最後の2年分の利息その他の定期金の受取証書)を法務局に提出する方法です。
書類が残っていれば、これが一番早くて費用もかからないですが、現実には、過去に完済した書類を保管されていることはまれです。現実にはあまり利用されていません。
1-5. 判決による抹消方法
担保権者を相手に抵当権等抹消の訴訟を提起し、勝訴判決を得る方法です。その判決を利用して登記権利者の単独による抹消登記申請を行います。
抵当権者を代表する者がいない場合には、特別代理人選任の申立てを併用することもあります。
2. どの方法を利用するか
共同申請ができる場合にはご相談にこられないので、ほとんどのご相談は共同申請ができない場合です。
また、完済した書類や債務消滅の書類を提出できることもほぼありませんので、除権決定による抹消方法と弁済証書による抹消方法を利用できることもほぼありません。
そうすると、実際に利用できる休眠担保権抹消の方法は、供託による抹消方法と判決による抹消方法です。その区分けは、弁済期から20年を経過しているか、供託する金額が現実的な金額かです。
当事務所の実務上は、判決による抹消が一番多い手続きです。
3. 期間の目安
3-1. 判決による抹消
6か月程度(判決取得まで)+2ヶ月(判決確定、抹消登記申請)
3-2. 供託による抹消
2ヶ月~3ヶ月程度
4. 専門家の活用
抵当権等の休眠担保権があることは、自宅などの不動産を相続した後に不動産を売却しようとして、このタイミングで発覚することが多いです。遺産分割協議をして、代償金解決や換価分割を試みようとして、抵当権等が抹消できず問題となります。
また、最近では、住宅ローンなどを返済し終わったが長らく抵当権を抹消しておらず、その住宅ローン会社が破産や清算をされて、抹消をできないというご相談が増えています。
そのような場合には、なかなか自分の力で抹消することは難しいです。まずは、抵当権等の休眠担保権の抹消に詳しい司法書士や弁護士に相談してみましょう。
まとめ
抵当権者が行方不明(破産や清算含む)、合併や事業譲渡などがあり分からない、非協力的などの場合、不動産に設定された抵当権等を抹消することは、意外に難しいものです。手続きも複数ありますが、どの手続も一長一短です。
不動産は高額で売却できる可能性があるものの、抵当権等が残っているとその価値は著しく低下してしまいます。できるだけ早く抹消をしておきましょう。
当事務所のサポート
当事務所は、抵当権、根抵当権、その仮登記などのいわゆる休眠担保権の抹消手続きを取り扱う法律事務所です。休眠担保権の抹消手続は、訴訟と登記実務の両方の知見が必要であり、取り扱う法律事務所は少ないと思われます。
これは、司法書士は登記実務に精通している一方訴訟経験は多くなく、一方で、弁護士は訴訟に精通しているが、登記実務に精通していないからと思われます。
当事務所は、平素より、登記と訴訟のいずれも取り扱っている法律事務所です。
休眠担保権の抹消では、訴訟判決を利用することが多いため、譲渡担保権の判決抹消の多くの経験を有する当事務所にぜひご相談ください。
また、(根)抵当権等が残っていると、不動産価値が著しく低下してしまいます。相続不動産、登記、休眠担保権の抹消の経験豊富な弁護士に、ぜひご相談ください。