遺言執行者は、遺言の内容を実行し、相続手続きをスムーズに進める役割を担います。遺言執行者を適切に選ぶことは、相続手続きを早期に、適切に終了させることにつながります。ここでは、相続争いを回避するための遺言執行者の選び方と注意点を解説します。
このページの目次
1. 遺言執行者の役割と重要性
まず、遺言執行者がどのような役割を果たすのかを理解することが大切です。遺言執行者は、遺言書に記載された遺産分割や相続手続きの処理を実行する責任を負います。
1-1. 遺言執行者の主な役割
遺産の管理と分配
遺言内容に従って遺産を管理し、財産目録を作成し、相続人に分配する役割を担います。これには、不動産の名義変更や預貯金の解約・分配などが含まれます。
債務の処理
被相続人が負っていた借金や未払いの税金がある場合、遺言の内容によっては遺言執行者はそれを清算します。
遺贈の実行
遺言に記載された特定の人(受遺者)に財産を渡す手続きを行います。
1-2. 遺言執行者の選び方が重要な理由
遺言執行者が相続人間での不公平感(不信感)を与えたり、役割を果たしていかったりすると、相続人間のトラブルの原因になります。そのため、公平で信頼できる遺言執行者を選ぶことが、もめない相続のカギとなります。
2. 遺言執行者にふさわしい人物の条件
遺言執行者を選ぶ際には、次の条件を満たす人物を選ぶことが望ましいです。
2-1. 公平性を保てる人物
中立な立場の人を選ぶ
遺言執行者は相続人間で特定の人に偏らず、公平に業務を遂行できる人物であるほうがいいです。親族の場合、特定の相続人と親しい関係にあると、公平性が疑われることがあります。
2-2. 信頼できる人
信頼性が高く、誠実であること
遺言執行者には、被相続人の意思を忠実に守ることが求められます。信頼できる人を選ばなければ、遺産が適切に管理・分配されないリスクがあります。
相続人の信頼も得られる人
できるだけ相続人全員から信頼されている人物を選ぶことで、遺言執行がスムーズに進むでしょう。
2-3. 財産管理の知識がある人物
法律や税金に詳しい人が理想
遺産が不動産や事業資産など複雑な場合は、相続や財産管理の知識が必要です。法律や税務の知識がある人であれば、相続手続きを的確に進めることができます。
高齢者を避ける
遺言執行者が高齢の場合、健康問題や将来の判断能力の低下が懸念されます。1つ下の世代の選任により将来のリスクを軽減できます。
3. 遺言執行者として弁護士や専門家を選ぶメリット
遺言執行者に弁護士などの専門家を指名することには多くのメリットがあります。
3-1. 法律の専門知識を活用
**法律に基づく正確な手続き**:弁護士は相続に関する法律に精通しているため、複雑な遺産分割も正確に進めることができます。特に、登記や相続税の申告が必要な場合は、登記や税務にも精通している人物が適任でしょう。
**相続人間の争いを防ぐ**:専門家が遺言執行者として介入することで、遺言書に適切に分割が定められていれば、相続人による遺産分割協議や相続手続きは不要です。相続人間の感情的な対立が入る余地がなくなります。弁護士などの中立的な第三者が対応することで、相続人全員が納得しやすくなります。
3-2. 財産管理がスムーズに進む
複雑な財産の処理
不動産や株式、事業財産など多様な財産がある場合、専門家が遺言執行者を務めることで、財産承継がスムーズに行われます。また、債務の処理なども適切に行われるため、相続人がトラブルに巻き込まれるリスクを減らせます。
迅速な対応
遺言執行には迅速な判断と手続きが求められます。専門家であれば、これらをスピーディに行うことが可能です。
3-3. 遺言執行者の報酬
報酬についての理解
弁護士などの専門家に遺言執行者を依頼する場合は、報酬が発生します。報酬は遺言書に記載するか、家庭裁判所が適切な金額を定めます。報酬の発生を考慮しつつ、相続争いを防ぐ効果を見込んで選任します。
4. 遺言執行者を選ぶ際の具体的なポイント
遺言執行者を選ぶ際に、次のポイントを押さえておくことで、相続争いを回避しやすくなります。
4-1. 家族の意向を考慮する
相続人の合意を得る
遺言書を作成する前に、家族と話し合いを行い、遺言執行者を誰にするかについて意見を聞くことが重要です。相続人が納得している場合、トラブルが発生する可能性は低くなります。
4-2. 複数の遺言執行者を指名する
役割を分担する
遺言執行者を複数指名することも可能です。例えば、特定の財産の管理を親族に任せ、それ以外を弁護士に委託するなど、役割を分担することで、トラブルを避けられる場合があります。もっとも、費用や意見対立のリスクがありますので、あまり勧めません。
4-3. 書面に具体的な指示を記載する
明確な遺言内容
遺言書に具体的な財産の分割方法や遺言執行者の権限を詳細に記載することで、相続人の解釈の違いによる争いを防ぎます。
5. 遺言執行者を指名した後の注意点
遺言執行者を指名した後も、トラブルを防ぐために気をつけておくべき点があります。
5-1. 遺言書の見直し
定期的な更新
家族構成や財産状況が変わる場合は、遺言書を定期的に見直し、遺言執行者の適切さを再確認します。特に遺言執行者の体調面に心配がでてきた場合には、他の遺言執行者を選任することも検討しましょう。
5-2. 遺言執行者に事前通知する
事前の了解を得る
遺言執行者を指名する際は、その人物に事前に伝え、同意を得ることが大切です。執行者に事前に通知し、役割について理解してもらうことで、スムーズな遺言執行が期待できます。
5-3. 家族に意図を説明する
選任理由を説明
遺言執行者に特定の人を選んだ理由を家族に説明することで、相続人が納得しやすくなります。遺言書の付言事項に、遺言執行者を選んだ理由や財産分割の考え方を記載しても良いでしょう。
まとめ
相続手続きをスムーズに行い、相続人の納得度をあげるためには、遺言執行者の選任は1つの有効な方法です。公平性、信頼性、相続の知識を備えた人物を選ぶことが基本です。親族を選ぶ場合は、相続人間の感情的な対立を考慮し、中立性が確保できるかを検討します。
相続が複雑な場合やトラブルが予想される場合は、弁護士などの専門家を選ぶことで、相続人間の争いを防ぐことができます。遺言執行者を選任した後も、遺言書を定期的に見直し、家族と情報共有しながら準備を進めましょう。
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