相続トラブルは感情的な対立や複雑な法律・税金問題が絡み、当事者同士では解決が難しいケースが多くあります。そのような場合、弁護士に相談することになります。以下に、弁護士が相続トラブルの解決にどのように関与するか、その具体的な解決方法について解説します。
このページの目次
1. 弁護士の役割
弁護士は、相続トラブルの各段階で法的なサポートを提供し、相続人同士の対立を解消するために尽力します。
1-1. 法的アドバイスの提供
法律知識をもとにアドバイス
弁護士は相続に関する法的知識を活かして、個々のトラブルの背景や問題点を分析し、依頼者に具体的な解決策を提案します。
遺産分割協議の進め方にはじまり、相続人の調査、遺産の調査、遺言書の有効性、分割協議の進め方、遺留分の算定・請求、相続税、登記移転などの当該事案で必要な分割手続きについて説明をいたします。
まずは、この必要な手続きを理解することがスタートです。
相続財産の調査
相続財産が多岐にわたる場合、弁護士は必要に応じて財産調査や資料の取得を行います。不動産、預貯金、株式、債務などを正確に把握することで、遺産分割を適切に進めることができます。
1-2. 弁護士への相談、交渉代理
弁護士への相談
相続人同士での話し合いで解決が見込めない場合は、まずは弁護士に相談してください。その際には、弁護士に代理交渉を依頼した場合の費用を確認しておきましょう。30分位話してみると、その弁護士のスタンス、人柄などがわかるはずです。
弁護士費用、手続きの難しさ、精神的負担、他の相続人との関係などを総合考慮して、弁護士に依頼するか決めましょう。
相続人間の交渉を代理
弁護士に依頼を決めたら、その後の遺産分割交渉はその弁護士が全て窓口になります。弁護士が交渉の代理人となることにより、感情的な対立が緩和され精神的負担の軽減が期待されます。
特に、相続人同士での直接的な話し合いがスムーズに行われていない場合に有効です。また、法的な誤解がある場合、極端に遺産を多くとろうとしている方がいる場合、話し合い自体をしたくない場合にも、有効です。
弁護士が冷静かつ法的な分割を前提として交渉することで、交渉が動き始めることがあります。
遺留分の調整
遺言書があって遺留分を巡る争いがある場合、遺留分をふまえて交渉をしたり、遺留分侵害額請求をします。
1-3. 遺産分割協議のサポート
遺産目録、遺産分割協議書の作成
遺産分割協議の前提として、弁護士が入った場合は、ほとんどの事案で遺産目録を作成します。遺産目録には、通常、評価額も記載します。
遺産目録を前提として遺産分割協議がまとまった場合は、弁護士が遺産分割協議書を作成して、各自に署名捺印を求めます。法的に有効な内容にすることで、後で不動産の登記移転ができない、余計な税金がかかったというようなことがないように配慮して作成します。
協議がまとまらない場合は、調停や訴訟に備えた準備も行います。
1-4. 調停・審判の代理
家庭裁判所での調停サポート
話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所での調停を申立てます。弁護士が依頼者の代理として調停に出席し、主張や証拠を戦略的に提示して、有利な解決を目指します。相続人には、重要な局面だけ出席していただくことになります。
審判・裁判の対応
調停でも解決できない場合は審判に移行します。弁護士は、審判や裁判で依頼者の希望を考慮して主張・立証を行います。
2. 弁護士を依頼するメリット
弁護士に相続トラブルの解決を依頼することで、以下のようなメリットが得られます。
2-1. 法的、税務的、登記的リスクを回避できる
複雑な法律問題に対応
相続には、遺産の評価、遺産分割協議、遺留分、特別受益、寄与分、相続税、所得税など多くの法務、税務が関わります。弁護士は、法的リスクを回避するためにリスクヘッジを行い、後に問題のない遺産分割を目指します。
失礼ながら、一般の方が作成された遺産分割協議書では、登記ができなかったり、税務上損であったり、その後の問題が起きやすいなどの事象が散見されます。
遺言書の有効性を確認
遺言書に不備がある場合や、無効の可能性がある場合には、弁護士が法的な観点から遺言書の有効性を検討します。
2-2. 感情的な対立を和らげる
冷静な交渉をサポート
家族間での感情的な衝突を避けるために、弁護士が交渉の窓口となります。基本的には、相続人間でのやりとりはなくなります。
精神的負担の軽減
これにより、相続人で話し合うという負担が軽減され、冷静に問題を話し合える環境を整えることができます。弁護士が法的な説明を行うことにより、相手の納得度があがることが期待されます。
2-3. 迅速な解決が可能
スムーズな手続き
弁護士が関与することで、それまで滞留していた遺産分割協議が、一挙に進み始めて遺産分割協議がまとまることがあります。特に、遺産目録や遺産分割協議書の作成で疑心暗鬼だったものが、法的に適切に作成されることで、お互いが納得できることで、解決までの時間の短縮が期待できます。
3. 相続トラブル解決のための具体的な方法
3-1. 遺産分割協議
遺産の分割方法を提案
弁護士は、相続人間で合意できるような遺産分割の提案を行います。
たとえば、不動産を一緒に売却して金銭で分割する方法(換価分割)や、特定の相続人が不動産を取得する代わりに他の相続人に代償金を支払う方法(代償分割)など、さまざまな選択肢を提示します。
その不動産売却に関与して、適切に弁護士が代金を預かり、相続人で平等に分割するという中立的な役割もこなします。
3-2. 調停の申し立て
調停をスムーズに進める
調停を申し立てた場合、弁護士が調停委員に対して依頼者の主張を明確に伝え、戦略的な協議を行います。まずは、調停委員に事案を理解してもらうことが、早期解決にとって重要です。相続に精通していない調停委員も散見されますので、基本的なことから説明を行う場合があります。
3-3. 審判よる解決
証拠の収集と主張
審判に進む場合にも、基本的には調停で提出した資料をもとに判断されますので、調停段階から審判を見据えて証拠提出、主張を行っていく必要があります。特に、不動産の評価や預貯金の動きなどは、裁判官が理解しやすいように一覧表などにすることもお勧めです。
3-4. 遺留分侵害額請求
遺留分を侵害されている場合、弁護士は遺留分侵害額請求を行います。遺留分の算定は、意外に難しいものです。
4. 弁護士への依頼を検討するタイミング
相続人間での遺産分割協議が停滞した場合や、遺産分割協議自体が精神的な負担となっている場合には、弁護士にまずは相談してみましょう。
また、遺産分割協議などの作成において、不動産登記ができるか、税務上の課税リスクがないかなどが心配な場合も、リスクを回避するために早めに相談しておいた方がいいでしょう。
4-1. 話し合いがこじれたとき
相続人同士の意見が対立している場合
話し合いが進まない、または感情的な対立が激化している場合は、弁護士が介入すること法的な冷静な解決が期待できます。
4-2. 相続財産が複雑な場合
不動産や未上場株式などが含まれる場合
不動産や未上場株式がある場合や、不動産売却がかかわる場合は、専門的な知識がないとリスクとなります。弁護士に相談することを勧めます。相続人間で争いがない場合にも、相続手続き、不動産登記移転、相続税の申告などを依頼することができます。
4-3. 遺留分を請求したい場合
遺留分が侵害されている場合
遺留分の請求には1年という短期の期間期限があるため、早めに弁護士に相談することが必要です。遺留分侵害額請求を行うための具体的な手続きや証拠の準備をサポートしてもらえます。遺留分の算定は、一般の方ではなかなか難しいと思われます。
まとめ
相続トラブルが起きて当事者同士では解決できない場合、弁護士にまずは相談しましょう。弁護士に相談・依頼することで、相続問題がスムーズに進み、精神的負担が軽減されることが期待できます。
弁護士費用などを考慮して、依頼するか決めましょう。弁護士にも得意分野、タイプがありますので、悩んだ場合は複数の弁護士に相談してみてもいいと思います。
30分話をしてみると、その弁護士さんの人柄、考え方などはある程度分かると思います。
当事務所のサポート
当事務所では、相続に関する法律相談、交渉代理、調停・裁判、相続税の申告、不動産の売却、登記移転まで幅広く対応しています。相続に関して経験豊富な弁護士が、相続全般のサポートを行います。相続問題でお困りの方は、ぜひご相談ください。