相続トラブルを未然に防ぐための生前対策

相続トラブルは、家族や親族間の争いを引き起こし、親しい間柄を分断する原因になることがあります。しかし、事前に適切な生前対策を行うことで、トラブルの発生を減らすことが可能です。ここでは、相続トラブルを未然に防ぐために考えておきたい具体的な生前対策について詳しく解説します。

1. 遺言書の作成

遺言書を作成することで、財産の分け方を明確にしておくことは、相続人間の遺産分割協議自体を防止するものであり、相続トラブルを防ぐ最も効果的な方法の一つです。

1-1. 公正証書遺言の利用

信頼性が高い方法

公正証書遺言は、公証人が遺言内容を確認し、厳密な法的手続きに則って作成されるため、無効となるリスクが少なく、トラブルが生じにくいです。公証役場で保管されるため、遺言書が紛失したり改ざんされることも防げます。

作成の手順

遺言者が公証役場に出向き、2人の証人の立ち会いのもとで作成します。公証人が遺言の内容を確認し、遺言書としての効力を保証します。

1-2. 自筆証書遺言を作成する場合

法的要件を守る

自筆証書遺言は、全文を遺言者が自書し、日付と署名、押印を含める必要があります。法務局での保管制度を利用すると、遺言書がより安全に管理され、法的要件も満たしやすくなります。

具体的な記載

財産の分配方法を明確に記述することが重要です。不動産の所在地や金融機関の情報などを具体的に記載し、登記や金融機関での手続きに支障がないようにする必要があります。

1-3. 遺留分への配慮

遺留分への配慮

遺言書を作成する際、相続人の遺留分を侵害するものとする場合には、その理由を付言事項に記載するなどして、その相続人の納得を得られるよう工夫します。

2. 生前贈与

生前に財産を贈与することで、相続財産を減らし、相続税の負担を軽減することができますが、適切に行わないとトラブルの原因になることもあります。

2-1. 暦年贈与の活用

年間110万円の非課税枠

生前贈与には、毎年110万円までの非課税枠があります。これを活用し、数年にわたって少しずつ財産を贈与することで、相続税の負担を減らせます。

贈与の記録を残す

贈与の証拠として、贈与契約書を作成したり、銀行の振込記録を残しておくことが大切です。これにより、贈与ではなく親のお金を勝手に引き出しただけだ等と言われることを防止します。

2-2. 相続時精算課税制度の利用

制度の概要

一定の要件を満たすと、贈与時には税金がかからず、相続時に贈与した分を相続財産に加算して相続税を計算して支払うものです。

慎重な計画が必要

相続時精算課税制度を利用する際は、税理士と相談しながら計画的に進めることが大切です。長期的な視点で税負担を最小化するための戦略を立てましょう。

3. 家族信託

家族信託は、相続の準備として有効な手段の一つであり、特に高齢者や認知症などのリスクがある場合に利用されています。

3-1. 家族信託の仕組み

信頼できる家族に財産管理を委託

家族信託では、信託契約により財産の管理や運用を信頼できる家族に託します。これにより、認知症などで判断能力が低下しても、財産が適切に管理されることが期待されます。

財産のスムーズな承継

家族信託は、遺言書では対応できない生前からの財産管理承継を図ることができ、そのまま相続人に承継させることにより、急な相続により不動産経営を引き継ぐなどのリスクに事前に対応できます。

3-2. 家族信託のメリット

財産凍結を防ぐ

認知症などにより判断能力を失った場合、その方の預金などを引き出せなくなったり、賃貸不動産の経営に支障が生じます。しかし、家族信託を利用することにより、財産が凍結されることなくスムーズに受託者に管理を任せて、生活を維持することができます。

遺言代用

被相続人の死亡後は、信託契約の内容に従って財産は承継されるため、被相続人の希望する方法により財産を分割することができます。

4. 生命保険の活用

生命保険は、相続税上非課税枠があり、遺産が多額になる方にとって有効な節税手段です。受取人の指定がある死亡保険金は、遺産分割協議の対象外であり遺産分割が不要です。

4-1. 受取人を指定する

受取人の指定で公平性を保つ

生命保険金は「受取人固有の財産」として扱われるため、遺産分割の対象にはなりません。相続人の中に特定の人を受取人にすることで、相続分の調整を行えます。たとえば、相続人の一人に多くの現金を残したい場合に有効です。

相続税の非課税枠

生命保険金には、相続人一人当たり500万円の非課税枠があるため、相続税対策としてもメリットがあります。

4-2. 生命保険のメリット

迅速な資金の確保

生命保険金は、相続発生後すぐに受け取ることができるため、葬儀費用や相続税の支払いに充てることができます。これにより、遺産分割協議が長引いても、生活費や諸費用の支払いに備えることができます。

5. 家族間のコミュニケーションを重視する

生前対策の一環として、家族間でのコミュニケーションを大切にすることもトラブル防止に役立ちます。

5-1. 定期的な家族会議

財産の現状を共有する

被相続人が生前に財産の内容や分配の意向を家族に伝えておくことで、相続人が状況を理解しやすくなります。定期的に家族会議を開き、相続について話し合う機会を設けることも有効です。

希望や意見を聞く

相続人それぞれの希望や意見を事前に聞き、調整することで、相続時の争いを未然に防ぎます。話し合いを通じて、分割のイメージを各自が持つことで、相続後に揉めないようにすることが期待されます。

5-2. 感情的なトラブルを防ぐ

付言事項の活用

遺言書に付言事項として、遺言者の思いや家族への感謝の気持ちを書き添えると、相続人が遺言を受け入れやすくなります。これにより、感情的な対立を和らげることが期待できます。

6. 専門家に相談する

相続に関する問題は法律や税制が絡むため、専門家に相談することで適切な対策を講じることができます。もっとも、遺産が相続税の基礎控除の範囲内である場合には、税理士への相談までは不要である場合もあります。

6-1. 弁護士への相談

法的トラブルを防ぐ

相続問題に精通した弁護士に相談することで、法的な観点からアドバイスを受け、トラブルを未然に防ぎます。遺言書の作成や家族信託の設計など、具体的な対策を提案してもらえます。

6-2. 税理士による相続税対策

相続税の計算と節税対策

税理士は、相続税の申告や節税のアドバイスを行います。多額の財産がある場合や、生前贈与を活用する場合は、税理士への相談を検討しましょう。

まとめ

相続トラブルを未然に防ぐための生前対策は、遺言書の作成や生前贈与、家族信託の活用、家族間での話し合いなど多岐にわたります。これらの対策を適切に講じることで、相続人間の争いを極力減らし、もめない相続を目指しましょう。専門家のサポートを受けながら、生前から計画的に準備を進めることが大切です。

当事務所のサポート

当事務所では、生前相続対策のコンサルティング、遺言書の作成支援、家族信託の設計など、相続トラブルを防ぐための総合的なサポートを提供しています。

相続に関するお悩みや不安がある方は、お気軽にご相談ください。相続経験豊富な弁護士が、相続税を考慮して、もめない遺産分割を目指してご協力いたします。

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