交通事故で骨折などのけがをすると、治療後も強い疼痛が残って苦しまれる被害者の方が多数おられます。こうした疼痛を「CRPS(RSD、カウザルギー)」といい、状況によっては後遺障害として認定されます。
今回はCRPSについて、普段から交通事故のご相談を数多くお受けしている弁護士が解説します。
1.CRPS(RSD、カウザルギー~とは
CRPSとはねんざ、打撲、骨折などの外傷をきっかけに強い疼痛や灼熱痛、痛覚過敏、感覚異常等の症状が発生する傷病です。日本語では「複合性局所疼痛症候群(ふくごうせいきょくしょとうつうしょうこうぐん)」といわれます。
人は外傷を負うと、交感神経がたかぶって血管が収縮します。通常は傷が癒えると交感神経が落ち着いて血管も元に戻るのですが、CRPSになると交感神経の興奮状態が続いたままになって血管の収縮が続きます。すると末梢部分への血流が阻害され痛みなどの症状が発生します。
CRPSの中でも明確に神経損傷のあるケースを「カウザルギー」、神経損傷を確認できないケースを「RSD」といいます。
交通事故で骨折後にギプスをはめていたところ、骨がくっついてギプスを外した後も強い疼痛が消えないケースなどがCRPSの典型例です。
2.CRPSの症状
2-1.RSDの主な症状
- 疼痛
- 関節拘縮
- 腫張
- 皮膚色、皮膚温の変化
- 発汗の変化
- 栄養障害
- 血管運動調節が不安定化
2-2.カウザルギーの主な症状
- 激しい灼熱痛
- 手や足の機能低下
- 通常の痛みを超えた激しい痛み
- アロディニア(着衣・微風などの触感で強い痛みを感じる)
- 浮腫
- 皮膚色の変化
3.CRPS(RSD、カウザルギー)で後遺障害認定される条件
交通事故でCRPSによって後遺障害認定を受けるには、以下の3つの要件を満たさねばなりません。
- 関節拘縮
- 骨の萎縮
- 皮膚の変化(皮膚温の変化、皮膚の萎縮)
医学的な診断基準と後遺障害認定基準が異なる
一方で「医学的な」CRPSの診断の際には「骨の萎縮」は不要です。医師からは①の関節拘縮と③の皮膚変化さえあれば「CRPS」と診断されるので、②の「骨の萎縮」についての検査が実施されない例が多々あります。しかしそれでは骨の萎縮を証明できないので、医師から「CRPS」と診断されていても自賠責では「後遺障害非該当」とされるでしょう。特に明確な神経損傷のみられない「RSD」の場合、後遺障害認定を受けにくくなりやすいので注意が必要です。
骨萎縮を証明するには「X線検査」や「骨塩定量検査(骨密度検査)」などが役立ちます。
CRPSで後遺障害認定の請求を進めるときには、専門医と後遺障害認定基準の知識を持った弁護士の両者によるサポートを受けることを推奨します。
4.CRPS(RSD、カウザルギー)で認定される後遺障害の等級
CRPSで認定される可能性のある後遺障害等級は、以下の4種類です。
- 7級4号
- 9級10号
- 12級13号
- 14級9号
事故後に疼痛や灼熱痛が消えずに苦痛を感じておられるなら、RSDやカウザルギーで後遺障害認定を受けられる可能性があります。まずは1度、弁護士までご相談ください。